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1988年6月9日

ビー玉収集家



  子供の頃はなかなかの収集家だった。
  テレビがなかった当時の子供の遊びとしては(横綱とまでは言わないが、悪くとも)関脇ぐらいには位置づけられていたはずの(故郷の佐賀ではペチャと呼んでいた)メンコやビー玉遊びで、近所の子供たちからけっこう上手に“戦利品”を奪い取ってきていたのだ。

  “収集家だった”といっても、小学校に上がるか上がらないかというという子供のことだから、実態がそんな程度だったのは仕方がない。だが、その頃はメンコやビー玉が遊び道具の本流だった。大きく溜め込む必要はなかったにしても、ある程度は手元に持っていないと、遊びの仲間に入りにくい雰囲気もあった。だから、そんな“収集”にもそれなりの価値はあったという訳だ。
  もっとも、母はこの収集癖には困らせられることが多かったはずだ。いつもビー玉で膨れあがった普段着のズボンのポケットはずいぶん傷みが早かっただろうし、数々の“戦場”を戦い抜いてきたメンコは、縁の方から磨り減って、ポケットの中に細かな紙くずをため、母の洗濯の手間を増やしたに違いない。

  もっと小さかった頃は、小石を拾い回っていた。神社の境内で、道で、砂場で、川原で、広場で、庭で−−。少しでも色や形が変わった石を見つけると、たちまちポケットに押し込んでいたという記憶がある。
  小学校の高学年になった頃には、人並みに、切手収集の味を覚えた。国内の記念切手で様々な年中行事の知識を得たし、外国切手を眺めながら地図帳を開き、しっかり地理の勉強もした。
  切手収集ではほかに、<世界に稀な物品は、稀だというだけで、物本来の価値以上に値打ちが上がることがある>という不思議な事実も学んだ。ときには、生意気にも、デパートに出かけ、切手収集コーナーに立ち寄って、自分の“コレクション”の“資産評価”なども試みてみた。

  七日づけの<USAトゥデイ>紙に、コイン、郵便切手など、この二十年間で値上がり率が高かった投資対象品の一覧表が掲載されていた。投資専門企業サロモン・ブラザーズ社の調査に基づいて、対象品の値段や価値が一九六八年から現在までにどう上昇したかが示されている表だ。
  「二十年前にもし、稀少コインに一〇〇〇ドル投資していたら、この六月一日現在で、その価値は一万六六五〇ドルになっていただろう」と同紙はいう。「それが株式への投資で、配当を再投資しつづけていたなら、価値は三七二七ドルになっていたはずだ」そうだ。BR>
  この間の値段・価値の上昇を複利率で表すと−−。
  1)コイン 一五・一%  2)米国切手 一二・九%  3)金 一二・八%  4)陶器 一二・〇%  5)石油 九・九%  6)ダイアモンド 九・九%  7)古美術品 八・八%  8)国庫証券 八・五%


  表の中で最も投資効果が薄かったとされたのは外国為替で、この二十年間の上昇率は四・七%。農地と銀の五・九%にも及ばなかった。
  この六月一日までの一年間に限っていうと、最も有利な投資はダイアモンド(二四・九%)で、次は石油(一九・五%)だった。

  メンコやビー玉の収集には、もちろん、コインほどの投資効果はなかったが、その一枚一個をためる行為には、カネでは計れない温みがあったと思う。

  −−ところで、少年少女の多くが一度は魅せられるあの切手収集には、子供が一人、現実の経済社会に参加していくために必要な、ある種の“通過儀礼”の意味があるのかもしれない、という気がするが、さてどうだろう。

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