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1988年6月20日

記事を送る心



  日本政府は十四日、世界の開発途上国に対する援助を今後五年間で現在の二倍以上に拡大すると発表した−−という記事をUPI通信が東京からのニュースとして送ってきた。
  記事の組み立てがおもしろかった。格別に主観を混ぜた書き方ではないのに、記事を送った記者の考えが知れてしまう、といった具合にできあがっていたからだ。

  日本のこの決定は<世界に対し、増進した国力に見合うだけの貢献を行う>との竹下首相の約束を裏づけるものとして行われた……首相は、非軍事的手段で平和維持に協力すると発言している……世界第二位の国民総生産(GNP)を持つ日本は、その〇・三一%を政府開発援助に当てている……五年後には〇・三五%になるという……〔だが現実はどうかというと〕一九八六年の日本の対GNP比援助律は先進十八か国中〔かろうじて〕十四番目だった……十八か国の平均は〔すでに〕〇・三五%に達している……首相の<政府開発援助は日本が最重要視している国際貢献策だ>という考えは、十九日からトロントで開かれる主要先進国首脳会議(サミット)で公式に発表される……これにより日本は一九九二年までの五年間に、前の五年間の二百五十億ドルの二倍、五百億ドル以上を政府開発援助として出資することになる……日本は昨年七百九十八億ドル貿易黒字があった……中曽根前首相は〔先に〕レーガン米大統領に、その黒字の中から三百億ドルを第三世界への援助資金として還元すると約束していた……米上院はそのあと、日本がそのGNPの三%を援助費とするよう求める決議案を可決している……竹下首相はさらに、日本の海外援助の質向上を約束した……〔だが〕日本の援助はこれまで、日本製品の購入を条件とする貸し付け(借款)形式をとり〔しかも、最も援助を必要としている国々にではなく〕中流アジア諸国を相手にすることが多すぎる、と批判されてきた……外務省は、今後は二国間贈与を増やし、日本品以外の製品の購入も認め、アフリカ、ラテンアメリカ諸国への援助も増やす、と語ってる……〔とはいうものの〕当局者は、その政策変更時期や援助額は明らかにしていない……日本の海外援助は六五%が近隣アジア諸国に、一一%がアフリカに、九%が中東に、八%が中南米に、七%がその他の地域にむけられている……〔だが、その実態はというと〕日本の援助の八〇%は、結局、日本の製品・サービスの購入に当てられているという……先進工業国のほとんどは、その政府開発援助を事実上贈与として行っている……〔これに比べ〕日本はまだ三〇%が貸し付けだ……外務省は、八七年の政府開発援助は、前年比三二・三%上昇して、七十四億五千三百万ドルに達した、と発表している……
  〔〕内は、記事の調子を強調するために(翻訳の際に)筆者が補ったものだ。UPIの記事を文の順序を変えずに読んでいくと〔だが〕など、否定的なつなぎが多くなってしまったが、原文自体が、UPI東京の記者が日本の政府開発援助の今後について懐疑的だということが自ずと分かってしまう仕掛けになっていた。記者は、日本の首相の対外発言に真実味がないことに苛立ち、援助の実態が看板倒れなのに失望していたのかもしれない。

  記者の名はマーク・クラミツ(倉光か)と記してあった。日系人のようだ。

  何の変哲もないと見える記事にも表情があることがある。記者の心が垣間見えることがある。

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