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1988年6月30日

フリーマーケット



  日本語を母国語とする人間は発音する際、LとRの使い分けが不得手だ、という定説がある。この定説は、少なくとも筆者に関する限りは、まったく当を得ている。<使い分け>の前にまず<聞き分け>が不得手なのだ。

  こちらの裁判に<予備審問>という手続きがある。英語を片仮名で書き表すとプレリミナリー・ヒヤリングだ。これを耳に入る音に少しでも近づけようとするとプリリミネリー・ヒーァリンとでもなるだろうか。
  <ヒーァリン>の方はRが一つだから、注意をして発音すれば何とかなる。問題はその前の<プリリミネリー>の方だ。
  この単語がR〜L〜Rで構成される最大級の“何度”を持っていることは初めから分かっているから、発音するとなると、しようとしただけでもう舌がもつれ始める。音が出かかるころには、唇と頬の筋肉が硬直している。
  そんな状態だから、いざ口にしたときも「?」と尋ね返されることになる。心理的なプレッシャーのせいもあろうが、もともと脳と筋肉がR〜L〜Rをこなせる訓練を受けていないのだから、仕方がない。

  <全国リサイクル運動推進連絡協議会>という団体がに日本にあることを先日新聞で知った。
  日本のリサイクル運動は一九七三年の“石油ショック”を契機に、アメリカのガレージセールを取り入れて始まったそうだ。この団体は運動を一層大規模なフリーマーケット方式へと発展させ、七月には川崎市の川崎球場とその周辺で全国規模の<ビッグ・フリーマーケット・イン・川崎球場>を開催することにしている。
  フリーマーケット方式のリサイクル運動は<お店屋さんごっこ>の遊び感覚が若者たちに受けて、この催しには全国九都道府県のリサイクル市民の会が参加、出店数は五百、入場者は延べ五万人が予定されているという。
  そこには、グループや個人が身の回りの不用品や手作り品を持ち寄って“自由に”販売する<リサイクル・フリーマーケット・コーナー>や外国人が開く<インターナショナル・フリーマーケット・コーナー>などが設けられる。川崎市清掃局が粗大ゴミの中から再生させた家具なども展示される。
  同協議会は立派なポスターを作って、この<ビッグ・フリーマーケット・イン・川崎球場>の宣伝、告知に力を入れている―。

  新聞に掲載されていたそのポスターの写真を見て「はて?」と思った。
  BIG FREE MARKET という文字が読めたのだ。
  記事を読んでいたときは、この片仮名表示は<蚤の市>のことだと思っていた。
  辞書に<FLEA MARKET 古物市、のみの市。骨とう品、中古品が売られる、特にヨーロッパの大都市における野外市場>などと書いてる、あのフリーマーケットだ。
  ちなみに、FREE MARKET はどの辞書にも載っていなかった。
  近い意味を持つ言葉に FREE PORT があった。<どこの国の船にも貿易上差別をしない自由港、無課税港>のことだ。


東京都小平市が主催するフリーマーケット
(From:http://www.city.kodaira.tokyo.jp/life/recycle.html)

  野球場を借り切って<お店屋さんごっこ>をやる―。そのおもしろは十分に想像できるし、値段に縛られない“自由な”売り買いも大いに楽しいだろうと思うが、このフリーマーケットはやはり<蚤の市>(FLEA MARKET)とするのが正しい表記だろう。

  R〜Lの聞き取り、発音に日本人が弱いという定説にはやはり根拠があるようだ。
  それにしても―聞き取り、発音は不得手でも―ポスターなどに表記する際には、万全を期して辞書で調べておくという手もあったはずだが―。

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