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1988年8月1日

続編 貿易摩擦



  日米間の次の“貿易摩擦”はどうやら、家庭用生ゴミ粉砕機(ディスポーザー)の対日進出をめぐるものになるらしい。ロサンジェルスの新聞では、まず<デイリー・ニュース>(DN)がこの問題を取り上げ、<ロサンジェルス・タイムズ>(LT)が後を追った。

  「日本では、たいていのハイテク製品はもう珍しいものではない。だが、アメリカ人が五十年も前から、欠かせない台所用具と見なしてきたディスポーザーを流し台に取りつけた家庭はほとんどない」(LT)という状況がこの“摩擦”の背景となっている。

  アナハイム(カリフォルニア)のビジネスマン、チャヴェス氏が三年前にディスポーザーのメイカーと契約して日本での独占販売権を獲得したとき「ヤッタ!と思った」というのは誇張ではあるまい。
  よく知られている<国民のほとんどが裸足の国に派遣された、靴販売担当の二人の商社マン>の話にかけていえば、チャヴェス氏は「この国では“まだ”だれも靴をはいていない。今後の見込みは無限大だ」と本社に報告した社員。ディスポーザーの普及率がゼロに近い日本はずいぶん大きな市場に見えたはずだ。
  しかも、日本政府はディスポーザーに関税をかけておらず、販売規制もしていなかった。
  だから、建設省が突然“行政指導”に乗り出して、在庫しないようにデパートなどに求める一方、建設業者にも、新築の際などにディスポーザーの備えつけをしないよう注意し始めたときのチャヴェス氏や米国メイカーの驚きの大きさは容易に想像できる。建設省の“行政指導”が行われる前に米国メイカーは「日本のディスポーザー市場の九八%を占拠していた」(LT)のだ。
  いや、日本だけではなかった。ディスポーザーは「米国が世界市場を独占しているたった一つの電気製品」(DN)でもあった。この製品に注ぐ米国メイカーの意気込みが相当のものであるのは当然だと思える。ディスポーザーは米国電気製品業界の最後の砦、希望の星だったのだ。

  チャヴェス氏らの不満の要点は「日本政府は(“行政指導”で)日本のメイカーが技術開発するまでの時間稼ぎをしている」というところにある。「日本人は(米国製のディスポーザーを)買いたがっているのに、買うな、といわれているのだ」(LT)という見方だ。チャヴェス氏はアナハイムに<米国ディスポーザー製造・輸出業者協会>(AMEDA)を設立して、もう二年間も建設省と闘っているそうだ。

  一方の建設省の反対理由は「日本の下水処理施設には、ディスポーザーからの排出物まで処理する能力がない」(LT)というものだ。「各家庭がこれを備えつければ、海や河川を汚染することにもなる」(LT)との心配もあるという。
  メイカー側は「米国ではこの問題に一九四〇年代から取り組んできており、下水処理施設の消耗を早めることもないし、むしろ、衛星水準を高める、と主張している」(LT)ほどで、建設省に負けてはいない。
  だが、日本の環境問題専門家によると、「日本の下水処理施設は、四十年前の米国のものと比較してさえ“原初的”なもの」(LT)といわれる。建設省の言い分もすべてがウソということではないらしい。それでも、「米国のディスポーザー・メイカーは<東京などの大都市の整備状況はいいはず>と主張している」(LT)という。

  この“摩擦”でも、問題なのは、日本政府の不明瞭な対応だ。下水処理に支障をきたし、環境汚染につながる、というのなら、日本国内でのディスポーザーの使用をさっさと法的に禁止すればいい。禁止したうえで話し合えば、問題の本当のありどころが明確になるはずだ。もちろん、その間、日本側ディスポーザー・メイカーの製品技術開発も禁止しなければ、米国側は納得しないだろう。

  誤解の上に誤解を重ねる、あの“日本的”市場開放策はもう辟易。今回、たかがディスポーザーのことではないか、といってすませられないことは、<デイリー・ニュース>紙を追った<ロサンジェルス・タイムズ>紙の反応の早さで明らかだ。「ああ、日本がまたか…」という響きがこのすばやい反応から感じ取れる。
  
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