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1988年9月7日

米国経済の再生



  <一九八八年通商と競争力に関する包括法>(包括貿易法)が成立した。
  日本および韓国、台湾などNIES(新興工業経済地域)諸国を念頭に置いた立法であることを明確にするためか、同法発効署名式典の場所は、日本や韓国からの輸入車の陸揚げ地でもある、太平洋に臨む港、ロングビーチに設定された。
  レーガン大統領は式典会場で声明を発表し、「包括貿易法は米国経済の持続的な発展と、競争力強化に役立つ」と強調、「政府と議会は世界市場開放実現のため、ともに歩んできた」と、同法成立の意義をうたい、自画自賛した。

  だが、同法はレーガン大統領や議会の思惑通りに機能するだろうか。
  昨年度の米国貿易赤字は千七百億ドル。今年度は千四百億ドル程度に縮小するものとみられているものの、その巨大な赤字の解消は並大抵のことではないだろう。まして、日本やNIES諸国を敵役に回して少し溜飲を下げたところで、何の足しにもならないと思える。

  同法成立間もない先月二十七日の<朝日新聞>に「新貿易法は米国を救えるか」と題する短い記事があった。記事は「新法の中心となるのは、不公正貿易の排除だ」とする一方、「これが貿易赤字に本質的な効果をもたらすと期待するのは無理だ。貿易赤字の大部分は、マクロ政策によるものだから」とのヤイター米通商代表の言葉を引用し、貿易相手国の不公正貿易の排除だけでは米国経済の再生はないと、同法の効果に疑問を呈している。

  十一月の大統領選挙の投票日に向け、共和党のブッシュ=クエール、民主党のデュカキス=ベンツェン各候補は全米各地で精力的な遊説活動をつづけている。だが、互いが相手側の個人攻撃に熱中していて、争点はまだ経済政策には及んでいない。正副大統領候補四人のういちのだれ一人として正面切手は貿易赤字問題を口にしないということから、この問題の深刻さと解決の難しさがうかがい知れるだけだ。

  この問題で米国が「米国を救う」方法は一つ、米国産業の建て直ししかない。新法を発動して相手国の市場を開放させたとしても、売り込む製品がなくては意味がない。
  レーガン政権がもたらしたとされる繁栄は虚像にすぎない。確かに、レーガン政権下ではインフレが抑制され、失業率も低水準に保たれ、消費も順調だが、この繁栄を支えてきたのは実は外国からの借入金と投資金だ。政府、民間企業が借りたり招じ入れたりしたカネが国民のあいだを流れ、つかの間の好景気が出現したというだけのことだ。
  米国はこの八年間、自分の働きや稼ぎ以上の暮らしを楽しんできた。明確なのは、膨れあがった借金を返済しながらこの暮らしぶりを維持するには、現在以上に働くしかない、ということだ。もし働きたくないというのなら、暮らしの質を落とすしかない。

  投票日が目前に迫っている。共和党と民主党はいまこそ国民に、もっと働き、暮らしを慎ましやかにし、貯蓄に励み、産業育成にカネを回すよう呼びかけるべきだ。だが、一票でも多く欲しい両党が、つかの間の好景気に浮かれている国民の頭に冷水を浴びせるようなことをする可能性は低い。

  レーガン大統領の経済運営に批判的な人々は、同大統領の「自由放任主義」信奉のために米国は全体として産業基盤の整備に無関心でありすぎたし、「マネーゲイム」に群がり、長期的再投資を放棄、生産活動の重要性を忘れ果てていた、と指摘している。
  包括貿易法などに頼っているだけでは米国経済の再生はできない。

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