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1988年10月3日

日本の特殊性 <1>



  社会体制論やシステム分析で知られる、東京大学の公文俊平教授(五三)がつい最近、「日本人の腸が西洋人より長いというのは誤りだと知ったのは二年前のことだ」と打ち明けた。知るきっかけになったのは、六月に最終合意された日米間の<牛肉・オレンジ自由化交渉>だった。
  公文教授はあるとき、米国人学者に「輸入制限を正当化するために政治家や農業指導者が言っているように、自分たちの腸は長すぎて、牛肉をを消化するのに向いていない、と日本人は本当に思っているのだろうか」との質問を受けた。そのとき「そうだ」と答えた教授を見つめた米国人学者の不審の表情が教授は気になった。それがきっかけだった。事実はどうなのか、教授は日本人医師たちにたずねてみる気になった。


公文俊平教授
(From:http://www.nikkei.co.jp/award/award2000/keynote2.html)

  「医師たちは、信じられない、という表情だった」と公文教授は言う。その話は、戦争で生じた肉不足に対する国民の不満を封じるために、第二次大戦中に政府の御用学者らがでっち上げた作り話だ、と医師たちは教授に教えてくれた。

  問題はここにある。
  そのような作り話が、抵抗もなく日本人に受け入れられ、しかも、今日まで信じられている、ということだ。
  産業界、政界などで、ますます多くの外国人が、こうした日本の特性に苛立ちを覚えるようになっている。
  その特性というのは、腸の長さの話からも分かるように、日本文化、日本語、日本人は、多くの面で世界に類を見ないほどユニークなのだ、という広く流布された信条のことにほかならない。
  多くの外国人専門家が指摘するように、この信条は貿易摩擦を引き起こし、進出外国企業の日本での活動を困難にしたばかりではなく、日本人が外国人と個人的な友好関係を築く際にも、感情的障壁となって立ちはだかっている。

  元商務省高官のクライド・プレストウィッツ氏はその著書の中で、日本人は「自分たちのユニークさについて、ほとんど妄想に近い考えを持っており、それがある種の民族的誇りにまでなっている」と述べている。
  <国際ビジネス情報>社のテイト・ラトクリフ社長は、日本の「文化的ユニークさに対する大げさな考えが、日本にビジネスの足がかりを築こうとしている外国企業を悩ませている」と不満を訴えている。
  日本人の感受性に合わせるために、外国企業は日本人との接触方法を細部にわたるまで変更させられている、ということだ。「物と値段がよくても」それだけでは日本では売れない、とラトクリフ社長は言う。

  <日経新聞>がかつて、日本に住む外国人に質問したことがある。「日本人を相手にビジネスを行う際に困難を覚える事柄を挙げてください」。その選択肢のなかには「絶えず日本のユニークさが強調されること」という項目があった。

  貿易交渉に携わっていたある米外交官は、匿名を条件に、「わたしは日本人に対して事あるごとに、日本人が自分たちのことをユニークだと考えていることは承知している、と伝えているが、実は、日本人はユニークでもなんでもないのだ。そんな考えは捨てるべきだ」という感想をもらしている。
  という記事を東京から送ってきたのは<ロサンジェルス・タイムズ>紙のサム・ジェイムソン記者だ。
  “特殊性”を主張しながら国際交渉に臨む日本の政府や民間企業に対する“時代錯誤”“情報音痴”との批判が、交渉戦術として故意に“日本の特殊性”を振りかざしているとの非難に変わる日が来なければいいが―。

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