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1988年10月20日

倹約経済



  通信社UPIが十三日、ワシントン発の小さな記事を送ってきた。
  「一九八七年度ノーベル経済学賞受賞者ロバート・ソロー氏をはじめとする指導的立場にある経済学者らで構成される<米国再建委員会>は十三日、<二〇〇〇年のための“投資型経済”>と題した報告書を発表し、米国人は政府も個人も、クレディットカードに頼る贅沢な暮らしをやめて、祖先にならい、倹約生活に戻るべきだ、との訴えを行った」というのがその記事の要点だ。同委員会は「個々人と政府がこのまま巨大な赤字を積み上げていけば、米国は世界の大国としての地位から“数世代にわたって滑り落ちつづける”ことになる」と警告しているという。

  米国は過去数十年間にわたって、預金口座や工場・商店などの生産的部門への投資を十分には行わず、しばしば借り入れに頼ることによって消費を拡大し、経済の活性を保ってきた。これについて同報告書は「米国の現在の経済状態の見方はどうであれ、未来経済の生命のもとである貯蓄と投資はいま危機に瀕している」と結論づけている。

  レーガン氏が大統領に就任してからの八年間で、米国が抱える負債は倍増し、二兆六千億ドルに達している。貯蓄率も、最大の貿易相手国である日本が国民総生産の一一%であるのに対し、米国はわずかに二%にすぎない。
  それ以上に問題なのは、工場新設、新製品開発のための研究費への民間投資率がこの八年間に、一九五一年から八〇年までの三十年間に達成した水準から三〇%も急落下したことだ。
  同委員会は次期政権担当者に対して、巨額の財政赤字を減少させるために投資率と貯蓄率を向上させる国家的戦略を立てるよう求め、「この八年間と同じ借金財政による消費を今後十年間つづければ、米国は英国やスペイン、フランス程度の経済二流国になる危険がある」と警告している。

  一方、同報告書は同時に「いまから二〇〇〇年までの間に、その資源を徐々に注意深く、消費から生産的な投資に振り向けていけば、米国は自らの国家的失墜をくいとめ、国内はもとより地球規模で繁栄する新時代の到来を約束することになろう」と述べ、米国と米国人が“投資型”に自己改変する必要を訴えている。

  同じ日、カリフォルニア大学ロサンジェルス校(UCLA)で、ジョージ・ブッシュ氏とマイケル・デュカキス氏の二回目のテレビ討論が行われた。


ブッシュ氏(左)とデュカキス氏の第一回テレビ討論(一九八八年九月二十六日)
(From:http://www.pbs.org/newshour/debatingourdestiny/newshour/88_1stprez_reax_camp_9-26.html)

  「大統領になったら、最初の四年で財政赤字をなくす、と約束するか」との質問を受けたデュカキス氏は「約束はできないが、赤字を着実に減少させることを政権の目標にすることは約束する」と回答し、「そのためには、支出に関して厳しい選択が迫られるだろうし、堅実な経済成長や、いまは徴収されていない巨額の税を集めることも必要になってくる」と述べた。
  これに対してブッシュ氏は「デュカキス氏は知事としてマサチューセッツ州の財政を均衡化させたが、それは法が要請したからにすぎない」とし、連邦財政については、議会が承認した予算の個々の項目については、拒否権を大統領に与える一方、均衡財政を法的に義務づけるよう憲法を修正するべきだ、との考えを表明した。

  だが、米国が抱える巨大な財政赤字について両大統領候補が語ったのは、九十分間の討論の中で、わずかにそれだけだった。質問者の問題軽視にも責任があるだろうが、二兆六千億ドルもの負債の問題がこの程度の回答で“よし”とされていいものかどうか、疑問が残る。

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