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1988年11月7日

コメと日本 <2>



  ヤイター米通商代表は先月二十八日、日本のコメ輸入制限は不当だとして包括貿易法三〇一条の発動を求め全米精米業者協会(RMA)が先に起こしていた訴えを、“条件”つきで却下する、と発表した。三〇一条は外国の不公正貿易慣行に対する対抗措置を規定しており、発動されると直ちにガット(関税貿易一般協定)に二国間協議に入り、つづいて、紛争処理小委員会に判断をゆだねることになっている。
  二国間協議では、報復措置をテコに米国が日本に対しコメ市場の開放を迫る状況となり、両国間の対立は先鋭化せざるをえなくなる。また、第三国による紛争処理小委員会に持ち込まれれば、米国の主張が認められる可能性が大きく、日本はこれを拒否する構えだから、米国は自動的に日本製品の米国への輸入制限などの報復措置を発動することになる。

  今回の“条件”というのは、十二月初旬にカナダのモントリオールで開かれるガット閣僚会議で日本が“進展”を示さなければRMAに再提訴を促す、というものだ。再提訴となれば、問題が振りだしに戻るだけではなく、今度はヤイター代表が提訴を受諾するから、日本は窮地に追い込まれることになる。

  全国農業協同組合中央会の山口巌専務理事は二十九日、次のような内容のコメントを発表した。「コメは日本人にとって特別であり、市場開放はできない。米国はコメを商品としての概念だけで考えているが、例えば、日本ではコメを作る水田は国土保全の重要な役割を果たしている。ダムの四倍の貯水量を水田は持っているし、日本列島の急峻な地形で、等高線ごとにある段々畑や田は洪水の防止に役立っている。こうした経済外のコメの効果を米国はもっと知るべきだ。われわれ生産者は、牛肉・オレンジ、ガット農産物十二品目と、相次いで自由化が決まり、二年連続の生産者米価の引き下げなどの厳しい環境に、自ら三割のコスト削減に向けて頑張っている。コメの市場開放は認めることができないし、日本の客観情勢を考えても無理だ」(<朝日新聞>)

  だが、日本国内にも「半永久的にコメの事実上の輸入禁止を続けられるとは考えられず、そういったことを念頭においた政策が必要ではないか」(諸井虔・経済同友会副代表幹事<朝日新聞>)との声もあり、国民全員がそろって自由化反対に姿勢を貫く考えだというわけではない。

  <ニューヨーク・タイムズ>紙のサンジャー記者は、山口・全中専務理事にみられる考え方を「古代からの習慣と現代の政策の有効な混合物」と受け取っている。再び同記者の記事を読んでみると―。
  例えば、半導体やビデオカセット・レコーダーといったもっと大きな貿易問題ではけっしてあり得ない形でコメが日本人の心に触れていることは疑いない。
  実際、コメが貿易に占める役割は小さい。一九八六年の総生産高は現在の為替レイトで計算すると約三百億ドルだ。しかも、この数字は日本政府の補助金でかなり膨れあがったものになっている。同じ年のエレクトロニクス産業の生産高は千四十億ドルに達していたのだ。
  だが、田植えと刈り入れはいまでも、神道の儀式や村祭と結びついて祝われている。病に倒れるまで天皇は、皇居内の小規模な水田の手入れをつづけていた。そこで収穫されたコメを神々に捧げるのも天皇の仕事なのだ。
                                     (つづく)

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