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1988年11月18日

一難去って



  米国ビジネス界のリーダーたちが頭を悩ませていることがあるらしい。
  いや、大統領選挙の結果はリーダーたちにとって好ましいものだった。民主党のデュカキス氏は、勝利すれば、ビジネス界のやり方に何かと干渉しそうだったのに対して、ブッシュ氏は“自由なビジネス”を標榜していたレーガン大統領の後継者であることを自認していたし、その政策は基本的には信頼できると見えていたからだった。
  だが、ブッシュ次期大統領に、米国が直面している深刻な経済・財政問題が本当に解決できるのだろうか。―選挙が決着すると同時に、ビジネス界は早くもそんな心配を始めているという。

  巨額の財政赤字。
  ブッシュ氏は「増税は行わない」と断言しているが、ビジネス・リーダーたちは、増税なしに財政赤字を解消できる、とは思っていない。むしろ、選挙運動中にブッシュ氏が自分を、税と予算に関して窮屈な立場に追い込んでしまったことを悔やんでいるという。
  <グッドイヤー>のマーサー会長は「ブッシュ氏は増税を断行するかどうかの問題以前に(公約を破ったという)傷がつかない、信用を第一とする人物でいなければならなくなってしまった」とこぼしているそうだ。
  経済・金融界では、ブッシュ次期大統領はすぐにも、自分の公約から巧妙に逃げ出す方法を見出す必要に迫られている、と考える人物が増え始めている、ということだし、ある経済動向予測会社は「算術が分かる者なら、だれでも増税を予想している。ブッシュ氏の支出の“柔軟凍結”政策はまがい物だ」と断定、民主党主導の議会と同氏のあいだに、増税をめぐってぎくしゃくした関係が生じる可能性を指摘している。
  議会と次期大統領が予算審議で行き詰った場合には、財政赤字解消に向け、金融業会の方から増税を求めるという事態もありえる、との見方もあるようだ。
  
  ブッシュ氏が財政赤字と税の問題に本気で取り組む姿勢を見せないことを嫌って、ニューヨーク株式市場のダウ平均株価は選挙のあと下落を開始しているし、為替市場でもドルはじりじりと下がりつづけている。ブッシュ次期大統領に対するビジネス界の反応はまず、予想以上のクールさとなって表れたといえる。

  現実には、ビジネス界の関心はすでに、増税の是非を論じる段階から「どういう具合に増税を行うか」に移っているらしい。個人税や法人税よりも、消費者全体が負担する消費税の増税を望む意見が多いという。
  <ファースト・インターステイト・グループ>の主任エコノミスト、ジェリー・ジョーダン氏は「ビジネス界がブッシュ氏に増税を求めているのは、自分たちの負担にはならない形で増税できると考えているからだ」と述べているそうだ。財政再建のためだからといて、自ら増税分を負担する気は、ビジネス界にはないらしい。

  大統領選挙期間中にデュカキス氏の経済政策に耳を貸す人物はビジネス界に多くはなかった。「デュカキス氏は本流を外れた人物」というブッシュ氏の宣伝が浸透した結果でもあったろう。また、デュカキス氏が同氏の社会政策を遂行した結果としてビジネス界が税負担を増加させられるのでゃないか、と心配するビジネス・リーダーたちにはそのころ、財政赤字はまだ重要な問題に見えていなかった、ということだろう。

  ブッシュ氏が選挙に勝利したとき聞かれた安堵の吐息はいま、次期大統領としての同氏の今後の経済・財政運営に対する不安の吐息に変わり始めているようだ。
  選挙で当面の敵であったデュカキス氏を退けることに成功したビジネス界はこれから、米経済の安定をかけ、増税反対を公約したブッシュ氏に対して考えの変更を迫る“身内の闘い”を始めることになる。

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