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1988年11月24日

輸入なしでは



 
  いつもなら、走りかう自動車が振り撒く音、仕事に追われる人々のざわめきが弾けるように聞こえるはずの街の通りを、いま、風だけがうなりを上げて吹きすぎていく。ガソリンを買うことができる者は幸せだ。グロサリー・ストアーの棚は、まるでブルガリアの町の店でもあるかのように、商品がまばら。テレビも、電器店の前に列をなすすべての人々に売るほどの在庫はない。紙に書かれた注文書を事務員たちがいちいち受け渡ししているのがオフィスの窓の向こうに見える。仕事を楽にしてくれるはずのコンピューターも簡単には入手できない。
  <USAトゥデイ>(十一月十七日)の経済面にそんな書き出しの記事があった。「食料も、燃料も、そして楽しみもなく 仕事から遊びまで、暮らしに欠かせなくなっている外国製品」という意味の見出しがつけられていた。
  製品、部品、食料それにサービス―。外国からのこうしたものの輸入にすべて門を閉ざしてしまえ、と主張する人はまずいない。
  だが、輸入品のせいで仕事がなくなったとする工場労働者が怒りだし、それが保護主義を叫ぶ声となって、国の隅々まで広がっていかないとは言い切れない。

  もっとも、米国人の大半は、ビデオ、カセット・レコーダー、テレビ、ステレオのほとんどが日本製か韓国製であることを知っている。鉛筆よりも複雑に作られている製品なら、たいがいのもので、少なくとも、その部品の一部は外国製だ。それほど米国経済は国際的になっているのだ、ともいえる。だから、輸入禁止は米国人の暮らしの隅々にまで影響するに違いない。

  米国最大の輸入品は石油だ。一九八七年には全輸入額の一一%(四百七十億ドル)を占めていた。米国の石油消費量の四四%が輸入されているということだ。石油の六〇%を乗用車やトラック、ジェット機などの交通手段が、四〇%をプラスティックやその他の化学工業が消費している。もし、石油の輸入が止まったら、ガソリンの国内価格は三倍以上となり、配給制が実施されることになるだろう。フリスビーから事務用椅子まで、石油を原料とする製品の値段も、すべて高騰する。コカイン密輸に代わって石油密輸が横行するに違いない。

  幸いにもガソリンは入手できたとしても、新車の購入は難しくなる。使用中のクルマの部品も買いにくくなる。現在、米国内を走る乗用車の二九・四%は輸入車だ。輸入が止まれば、残りの七〇%の米国車に人が群がることになるが、その米国車の部品がまた輸入品だ。こちらも買えなくなる恐れが強い。ジェネラル・モータースは三〇%、クライスラーは一〇%の部品を外国製に頼っている。

  暮らしの周辺に目をやると―。
  居間のテレビの前に座る。VCR(輸入一〇〇%)でビデオを観ながらコーヒー(九九・九%)を飲む。おもちゃ(大半が輸入)の人形を抱いた娘にはココア(八〇%)だ。一時間もするとアルコール(二五%)が欲しくなる。野球のリトルリーグに入っている息子がグラブ(プロ用高級品だけが米国産)とランニングシューズ(純国産はまれ)を買ってくれとにじり寄ってくる。そろそろパソコン(IBMもアップルも外国製部品なしには動かない)で仕事をするからとごまかすが、テレビの前を離れる気にもなれない―。
  商務省は十六日、九月の貿易収支を発表した。赤字幅は前月比、一五・八%減の八十九億六千八百十万ドルだった。

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