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1988年11月29日

デミング賞



  工業製品の品質管理の向上に業績があった個人や会社に与えられる賞がある。デミング賞という。日本に品質管理の手法を伝えた米国人経営コンサルタント、W・エドワーズ・デミングの功績を記念して一九五一年に日本で設立されたものだ。

  応募者は一年半にわたって選考委員会の精密な審査を受けるが、受賞者数に枠があるわけではない。賞の基準に合えば、何社・何人でも受賞が可能だ。
  一九八四年からは外国の個人・会社にも参加の道が開かれているが、デミングに品質管理法のヒントを与えたはずの米企業を含めて、これまで外国からの参加はない。

  品質管理(クォリティー・コントロール/QC)とは、市場に送り出される製品やサービスの質が一定の許容範囲に維持されるように、製造・流通の各段階で検査・評価と必要に応じた修正・改善を行う経営管理法だ(<イミダス>一九八八年版)。だが、実際には、この手法を発展させて製造工程、流通過程だけでなく、製品の設計から最終使用段階にいたるまで、企業活動全般の品質管理を行おうという「総合品質管理」(トータル・クォリティー・コントロール/TQC)あるいは「全社的品質管理」と呼ばれる考え方を採用する方が最近では普通になっているという。


富士電機が1983年に受賞したデミング賞
(From:http://www.fujielectric.co.jp/company/factory/matsumoto_f2e.html)

  TQCの特徴は、品質管理が企業活動の全般に及ぶため、従業員全員が責任を負うことになり、目標を効果的に達成するためには、各個人が強い原価意識を持つよう強調される点にあるとされる。
  原価意識徹底の方法として重要視されるのがQCサークルと呼ばれる各現場の作業グループだ。サークル運営は自主性に任せられるが、各メンバーは品質管理の手法の学習、目標の設定、問題の発見、解決策の提案など幅広い面で、労働者としての自己向上が期待される。

  <USAトゥデイ>紙によると―。
  自動車、電機、コンピューターなどの分野での日本の成功はTQC導入によるもの、との見方は米国にもあるものの、米国企業としてTQC活動を積極的に導入して成功した例はこれまであまり知られていない。
  そんな中で、フロリダ州南部一帯の三百万人に電気を供給している電力会社<フロリダ・パワー・アンド・ライト>(FP&L)がデミング賞の受賞競争に参加することを決めた。
  FP&Lにはそれなりの自信がある。この三年間で、顧客からの苦情と停電を半減させることに成功しているのだ。そればかりではない。FP&Lの成功を知って<ゼロックス>を含む、<フォーチューン>誌トップ五〇〇社のうちの多くが同社の品質管理法を見習い始めたのだ。かつてデミング賞を受賞したことがある<関西電力>も社員を見学に派遣している。
  そのFP&Lも以前はひどかった。顧客と会社の関係は最悪で、料金引き上げもしょっちゅうだった。変わったのは、マーシャル・マクドナルダ前会長が日本を訪問してからだ。同会長は「トーストを焦がして、あとで焦げを落とすよりは、そろそろトースターを修理しようではないか」との表現で、同社が品質管理に取り組む考えを明らかにした。
  FP&Lは、デミングが日本に教えた通りのことを一から勉強し直し始めた。
  品質管理部長であるケント・スターレット氏がまず管理手法をマスターした。セント・ルシールに原子力発電所を建設した際には、通常の半分の期間、六年間でそれを完成させた。建設費も予算から六億ドルも少なくてすませた。同社はいま、全社一丸となって、全米一の電力会社になることを目標に、TQCに取り組んでいる。
  デミング賞受賞を目指して今回、FP&LはまずTQC活動に関する一千ページ以上に及ぶ報告書を作成している。その審査結果が来月に公表される。パスしていると、同賞選考委員会の立ち入り審査を受ける。受賞者の発表は来年終わりごろになる。

  米国人が開発した手法を日本が習得し、磨き、米国人がこれを見直す―。
  さまざまな分野でこれまで何度も見られたことに似ているが、この話は、現代産業を“つい先日”まで支えていた米国人の労働者魂の健在ぶりがうかがえるところが特徴となっている。

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