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1988年12月6日

変わり身



  <ロサンジェルス・タイムズ>紙によると、どうやら、日本の変わり身の早さが改めて注目を集めているようだ。
  今度の分野は農業だ。
  日本はつい先日まで、農産物市場の開放に頑強に反対しつづけていた。生産農家を保護することを理由にして、たとえ世界全体から“狡猾だ”と批判されようが、一寸刻みの“延命策”を弄して、開放要求に抵抗してきたのだった。

  それが、世界世論に押されてガット(貿易と関税に関する一般協定)の決定を突きつけられ、牛肉や加工ずみのトマト製品、オレンジなどのかんきつ類を含む残存十二品目の輸入自由化を承認し、米国に次いで世界第二位というその農産物市場を“ほぼ”全面的に開放することにしたそのとたんに、なんと、自らが日本への農産物“輸出”を開始しようとしているのだから、その変わり身の早さが注目されるのは当然といえよう。

  カリフォルニア州商務局は先月三十日、ケチャップメイカー<カゴメ>の米国現地法人<カゴメU・S・A>が来年一月、一大トマト産地として知られる同州ロスバノス市で米国工場の建設に着手すると発表した。建設費は二十五億円(約二千万ドル)。一九九〇年春に、業務用トマトケチャップと飲料の生産を開始し、当面は全製品を日本へ逆輸出するという。

  日本からの進出はカリフォルニアに留まってはいない。メリーランド州とバージニア州の海岸部ではソフトシェル・クラブや貝、ウニの収穫業、モンタナ州やワシントン州では畜産業への投資が行われ、フロリダ州では、“牛肉・オレンジ問題”としてついこのあいだまで日本の市場閉鎖性の象徴となっていたあのオレンジの農場やジュース工場が日本人に買われているそうだ。
  一方の牛肉でも、加工業への新たな進出が決まっている。<サウスフィールド・ビーフ>社がカリフォルニア州フレスノに創立され、霜ふり肉の日本向け輸出を開始することになったのだ。四年前からやはり霜ふり肉の対日輸出をやっている、ロサンジェルス近郊ピコ・リベラの食肉業<E・B・マニング&サン>社は今後、日本企業の進出増加を受け、厳しい競争を強いられることになるかもしれないという。

  日本市場開放という新たな事態に加え、円高が農業分野での対米進出を加速させている。進出用資金が潤沢になったというだけではない。米国での果汁生産コストはいまでは、日本での約半分だそうだ。ジュースの値段は三分の一だ。また、輸送費についても、東京―大阪間はサクラメント―東京間と大差はないということだ。
  日本政府が自由化を承認すれば、日本の農産品加工業者はコストの面で外国企業に太刀打ちできなくなる、という事情も、彼らの変わり身の早さに拍車をかけているようだ。
  <カゴメ>の進出を伝えた時事通信社は「雇用の創出に加えてカリフォルニア農産品の対日輸出が図れることを地元では歓迎しており、同社の進出を州政府が発表したのも、このプロジェクトにかける期待の大きさを反映したものとみられる」と解説し、農業分野への日本企業の進出が同州で歓迎されていることを強調していた。

  だが、一方で、日本政府もその運営資金の一部を援助しているワシントンの経済研究所<ジャパン・エコノミック・インスティテュート>は今年五月、日本が米企業の吸収・合併ゲームに参入したのは最近のことであるが、米国世論は、長くより大きい投資実績を持つ欧州やカナダからの進出よりも日本からの進出の方を懸念している、との報告書をまとめている。

  変わり身の早さが“抜け目のなさ”と見られ、疎んじられることがなければいいが―。

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