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1988年12月8日

自主規制要請



  輸入を増やして貿易黒字が縮小し始めるやいなや、日本の製造業の一部にまたもや輸入規制の必要を訴える声が大きくなりだした。
  日本へ“ダンピング輸出”しているとして、韓国衣料メーカーに対する規制を厳しくするよう、ニット衣料製造業界が日本政府に求めているのだ。
  その日本からの輸出にダンピングの疑いがあると米国企業が苦情を言いつづけていたのは、まだそれほど昔のことではない。
  ―という<ウォールストリート・ジャーナル>(十二月五日)の東京発リポートがおもしろい。
  通産省の消費者製品担当高官は「歴史は繰り返す」という格言を思い出し、日米貿易交渉に当たった外交官は、米国側から聞いたのと同じ苦情をいまは日本が口にしている、と言っているそうだ。
  ニット衣料業界などから聞こえてくる保護主義的な要求に対して、日本政府はこれまでのところ、分別のある対応を行っている。日本市場の一部への進出が激しいことを理由にして、アジアの新興工業勢力である香港や韓国、台湾、シンガポールに対する“NIESたたき”をやるつもりはない、と当局者も言明している。ここまできて、いまさら市場開放政策を変更する意思も日本政府にはない。貿易慣行の“不公正さ”や市場の閉鎖性についての批判をかわすために日本はそれなりの努力を行ってきたのだ。

  しかも、貿易黒字は今年も七百十億ドルの巨額に達するとみられている。何よりもまず黒字減らしに取り組むべきだという米国などからの批判は、まだまだ避けられそうにない。輸入障壁の復活などできるはずはないのだ。
  
  韓国ニット製品の輸入は二年前との比で、下着は九一%の増加、シャツは三・五倍にもなっている。値段はもちろん日本製品より安い。日本のニット衣料業界は、市場を奪う目的で韓国メーカーがダンピング輸出を行っているとして、調査を開始するよう日本政府に求めている。
  通産省によれば、化学繊維、木綿糸、セメントなどに加え、半導体やテープレコーダー、ステレオのメーカーまでがニット衣料業界同様の問題を抱えている。

  だが、NIESはかつて日本が通ってきた道を進んでいるだけだ。だから、相手のやむにやまれぬ状況が見えてしまうという立場に日本はあり、米国が対日交渉で成功したほどには、NIESからの輸出攻勢を防ぐことはできないだろう、との見方もある。
  明らかなのは、外国からの批判と国内利益との板ばさみに日本政府が陥っているということだ。調査を実施して、もしダンピングの事実を発見した場合、他の国々からの批判を無視してまで報復関税を適用するべきかどうか―。ダンピングの認定が出ない場合には、ニット業界をはじめとする一部国内産業に“被害”が出ることは疑いない―。それに、国会、自民党がこれを黙って見逃すかどうか―。

  幸か不幸か、韓国の対日輸出は今年十月までに、九十五億九千万ドルに達し、昨年一年間の八十億八千万ドルをすでに超過している。十月までに日本の対韓“黒字”も二十九億七千万ドルと、昨年同期の五十一億五千万ドルから大幅“縮小”を示している。
  日本政府にできることは、どうやら、この貿易収支のアンバランスの改善を材料に、韓国ニット衣料業界に輸出の“自主規制”を望むぐらいしかないようだ。
  なるほど、日米間のこととして少し前によく聞いた話に実によく似ている。日本がこの問題にどう対処するか―日本の成熟度―にいま、たぶん、世界の目が集まっている。

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