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1988年12月23日

政界スキャンダル



  日本で今年起きた政界スキャンダルの主なところを列挙すると―。

  @砂利石材船汚職  全国砂利石材転用船組合連合会の幹部の不正経理に絡み、公明党の田代富士男参議院議員が同連合会幹部から約一千万円を受け取り、連合会に有利な国会質問主意書を内閣に提出した。田代議員は収賄事実を否定したが、結局は辞職した。
  A商品券事件  宮本共産党中央委員会議長を「殺人者」と呼んで国会審議を止めた浜田幸一衆院予算委員長が、共産党を除く野党委員全員に、一人当たり十万円の商品券を贈った。商品券は返却したと全員が証言している。
  B株売買“申告漏れ”事件  元大蔵省事務次官でもある自民党の相沢英之代議士が株の売買に絡んで、三年間で二億円の“申告漏れ”をしていた。
  C総理府広報汚職  青少年の健全育成なども行う総理府で、政府広報のテレビ番組発注に絡み、広告代理店に便宜を図り賄賂を受け取っていた広報参事官が逮捕され、幹部職員、OBまでが取調べを受けた。
  D<明電工>事件  配電盤メーカー<明電工>の中瀬古功元相談役が株の売買所得二十五億円を隠していたほか、社会党の横江金夫代議士に現金百万円を渡し、自分の業界に有利な質問を国会でするよう画策した。同社関連会社の株の第三者割り当て増資では、公明党の矢野委員長にも関与の疑惑が持ち上がっている。
  E<リクルート>疑惑  川崎市の<かわさきテクノピア地区>に進出した<リクルート・コスモス>の非公開株を同市の助役が購入し、店頭売り出し直後の急騰時に売却して、一億円以上の利益を得ていた。同様の方法で<リクルート>からカネを贈られたされる疑惑関連者の中には竹下首相、中曽根前首相、安倍幹事長、宮沢蔵相、森田日経新聞社長、丸山読売新聞副社長、高石前文部事務次官、加藤前労働事務次官、<NTT>の真藤会長、式場・長谷川両取締役、牛尾治朗<ウシオ電機>社長、諸井虔<秩父セメント>会長などの名前が挙がり、宮沢蔵相と真藤会長が辞任したほか、公職から身を引くかそれぞれの職を辞す者が続出した。

  <明電工>事件はまだその火が消えきってはおらず、<リクルート>疑惑はいっそう深まっている。不幸なことに、政界スキャンダルは今年も相当に燃え盛ったといえよう。

  <リクルート>疑惑では、江副前会長は、<リクルート・コスモス>株のばら撒きを普通の“経済行為”と称して、特に目的があってのことではなかったと述べているが、―奇妙な話だ。
  何らかの形で株を受け取ったのではないかとされている人物の中では、中曽根前首相の二万九千株が群を抜いている。有力政治家を見れば、以下、安倍幹事長が一万七千株、竹下首相が一万二千株、再三の説明変更のあと辞任した宮沢蔵相は一万株だった。この株数の大小のつけ方を見ればやはり、“特に目的”があったと見るのが自然だろう。<リクルート>のスーパーコンピューター導入に際して多大の便宜を図ったとされる<NTT>の真藤会長に渡った株が、まだ自民党次期総裁の目が消えたわけではなかった宮沢蔵相と同じ一万株だったという事実も意味ありげだ。

  十四日の<ウォールストリート・ジャーナル>紙は「<リクルート>はくさいと皆が思っているが、その匂いが何であるかを告げられる者がほとんどいない」と述べ、この贈賄疑惑が解明される気配が一向にないことへの不審を表明している。

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