今月の


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1988年12月29日

出来事トップ10



  ロンドン、パリ、東京、ローマ、メキシコシティー、リオデジャネイロ、シカゴなど世界各国に住む、百科事典<エンサイクロペディア・ブリタニカ>の編集者三十人が今年の増補版作成のために選んだ<一九八八年出来事トップ10>が今月中ごろに発表された。

  第一位とされたのは<ソ連の変貌>だ。ゴルバチョフ・ソ連共産党書記長兼最高会議幹部会議長は今年、新政策や新方針を矢継ぎ早に発表した。発表を知らせるニュースは、すで人々の耳に慣れ始めていた“グラスノスチ”(公開)や“ペレストロイカ”(改革)という二つの言葉とともに、ソ連国内はもとより、世界中を駆け巡った。
  ゴルバチョフ改革路線のハイライトとなったのは、編集者たちによれば、今月の国連総会で明らかにされた“一方的大規模兵力削減政策”だ。これは、東欧諸国から二年以内に六個の戦車師団を撤退させ、これを解体、兵力五万人と戦車五千台を削減することを含め、全体で五十万人にのぼる兵力削減を宣言したものだった。
  一方、エストニアなどソ連邦内共和国の反中央政府行動、アゼルバイジャンなどでの民族対立は、変わりゆくソ連の不安定さも印象づけた。

  第二位に挙げられたのはジョージ・ブッシュ氏の米大統領選挙での勝利だ。副大統領としての実績と、レーガン政治をほぼそのまま継承するだろうとの見方が世界に安心感を与えた、と評されている。

  第三位はイラン・イラク戦争の停戦実施だ。世界の石油基地ペルシャ湾一帯の緊張緩和を全世界が歓迎した。「どんなに激しく敵対している二国間にも妥協の余地はある」ことを証明する停戦だった、とされている。

  第四位はソ連のアフガニスタンからの撤退開始。反政府ゲリラ側が戦争継続を主張する中、ソ連軍は二月半ばまでには撤退を完了する予定だ。

  第五位はソウル五輪の開催。陸上のフローレンス・ジョイナーや水泳のマット・ビオンディの大活躍、筋肉増強剤ステロイドの使用によるベン・ジョンソンの金メダル剥奪、ボクシングの判定をめぐって韓国が起こしたリング外の“闘い”も記憶に残るものとなった。

  第六位に挙げられたのは<異常気象>だ。懸念されるのは世界各地での大洪水や暴風雨の襲来、激しい熱波、旱ばつなどの諸現象とオゾン層の破壊や石油・天然ガス燃料の使用過多、植物生態系の破壊などとの関連だ。

  第七位は<パレスティナ問題>。秋に入ってから行われたパレスティナ解放機構(PLO)のアラファト議長による「独立国家樹立宣言」はこれまでの姿勢を一転させ、事実上、イスラエル国家の存続を認めた。イスラエル自身の拒絶にもかかわらず、強力な支持者である米国がPLOとの対話再開を決定したため、国連を通じてのパレスティナ・イスラエル間の平和交渉も実現する可能性がでてきたとの見方が全世界に広がっている。

  第八位に入ったのは、パキスタンでベナジル・ブット氏が首相になったこと。イスラム世界では初の女性宰相の誕生だ。

  第九位は<麻薬汚染>。衰えを見せない麻薬の使用と密売買はそれ自体が大問題であることに加え、中南米を中心に、莫大な富と権力を持つ麻薬“王族”が生まれており、米国の頭痛の種となっている。

  第十位は米国がスペースシャトル計画を再開したことだ。米国民が誇りを回復し、国の技術力への信頼と開拓精神を取り戻したことの意味は大きい。

  このほかでは、アルメニア大地震と、乗客乗員二百五十八人と地上の数十人が死亡したパンナム機墜落事件も大きな出来事だった。
  一九八八年が終わる。

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