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1989年1月5日

調査捕鯨


  マスコミが一九八八年の<世界の美談ベスト10>を発表していたとすれば、上位を占めていたに違いないと思われる出来事に、アラスカ最北端バロウ沖合いで氷原の真っ只中に閉じ込められたカリフォルニア灰色クジラ三頭に対する救出劇がある。
  三頭のうち一頭は間もなく行方不明になり、残る二頭の“運命”に世界の視線が集まった。ゴルバチョフ・ソ連共産党書記長のペレストロイカ(変革)政策決定後の米ソ緊張緩和ムードを象徴するかのように、最後にはソ連の砕氷船がはるばる駆けつけて二頭を外洋に解放し、事件はめでたく解決したのだった。

  だが、費用数百万ドルと言われたこの救出劇の裏で聞かれたのが「解放してやっても、どうせ日本人に捕らえられて喰われてしまうだけさ」という声だ。日本捕鯨協会は米国などの通信社に向けて慌てて「日本人やエスキモーは氷に閉じ込められたクジラを捕らえることはありません」という異例の、いささか的外れのメッセージを送ったという。

  国際捕鯨委員会(IWC)は一九八七年春を期限とする捕鯨全面禁止を決めている。生息数や分布状況などを“科学的に調査する”ための捕鯨を対象から外してのことだ。それが<調査捕鯨>と呼ばれるものだ。

  「日本の卑劣な捕鯨業者たち」という“過激”に響く見出しをつけて<ニューヨーク・タイムズ>が十二月二十一日、クジラの問題を論じていた。「科学的調査のためと称して、日本が今年も捕鯨船団を船出させた。これは実際には商業捕鯨であり、三百頭のミンククジラを捕らえて日本人の食卓に届けようというものだ」
  この論説によれば、日本のこの捕鯨はIWCの決定と米国法に公然と挑戦するものだ。論説は「昨冬の捕鯨のあとで日本に対して実施された一連の制裁には効き目がなかったようだ。ならば、ワシントンはいっそう厳しい措置をこうじるべきだ」と主張している。
  同紙はさらに「アイスランドとノルウェーも調査捕鯨を行っているが、両国はIWCのクジラ保護方針を損なわない範囲にとどまっているが、日本のやり方は、頑なで手に負えない。昨年、日本は当初、八百七十五頭の捕獲を主張した。IWCの反対にあって三百頭まで要求を縮小したが、科学的調査としてはこの数字でも多すぎるとしてIWCはこの案も拒否した。それでも日本は結局この年、二百七十三頭を捕らえてしまった。この二百七十三頭のクジラは動物学会の研究をではなく、日本人の食卓をにぎやかにするのに役立てられただけだった」という。
  
  日本の捕鯨続行に対して米国は<パグウッド・マグナソン修正法>を発動し、米国沖二〇〇カイリ内での対日漁獲割当量を削減した。だが、サケ漁などにいくらか影響を与えたものの、米国はそれ以前にすでに漁獲制限を実施していたため、この削減には実質的な制裁効果はなかった。
  そこで、ベリティー商務長官は日本に対するさらなる制裁強化を検討している。日本にとって最悪の場合、“ノリから真珠にいたるまで”漁業関連全商品の米国への輸入が禁止されることになるかもしれない制裁強化案だ。ただ、皮肉なことに、米国は漁業関連商品を、日本からの輸入額の四倍も対日輸出しており、日本が報復措置をとることになれば、米国の漁業関係者が困ることになるのは明らかで、この制裁強化案が実施に移されるかどうかは不明だ。

  それでも、世界で最も信頼されている新聞の一つとされる<ニューヨーク・タイムズ>の論説は“本気”だ。商務長官に現在のもの以上の権限を与え、漁業関連商品以外も対象にして制裁が行えるよう法改正することを訴え、日本に対して「すばやく効果が上がる痛烈な制裁」が行われるよう真剣に求めている。

  日米摩擦の種は尽きないようだ。

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