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1989年2月6日

日本と指導性


  「貿易赤字を増やしながらわれわれは他の国々に発展を分け与えてきた。これらの国々はわれわれの貿易赤字のおかげでうまい汁を吸ってきている」(ジョージ・シュルツ前国務長官)
  「われわれは、ただのランチを食べているつもりで、実は借金を増やしてきた」(フレッド・バーグステン国際経済研究所所長)
  「米国は西側世界で最も生命力のある国。今後もそうだ」「日本と同じ歩調でやっていけないと考えるほど、米国が悲観的な敗北主義者になる必要があるだろうか」(ヘルムート・シュミット前西独首相)
  「われわれが米国企業を売却しつづければ、米国はやがて、資本家ではなく労働者の国になるだろう」「事がこの調子で進めば、われわれは最後は日本人のために働くことになってしまうだろう」(レスター・サロー・マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院学長)
  「日本は熱い火にかけられたフライパンのようなもの―。外部からの力には非常にもろい国だ」(チョン・フーンモック<現代建設>社長)
  「核兵器なしに核時代の大国になれる国はない。しかも、日本や西独には他の諸国が核兵器の保有を許さないだろう」(リチャード・ニクソン元米大統領)
  「日本もカネがすべてではないことが分かるようになるだろう。ちょうど、われわれが武力がすべてではないことを知ったように」(アナトリー・アダミシン・ソ連副外務大臣)
  「ガチョウにたとえれば、日本はいつも、自分が先頭になって飛ぶガチョウだと思っている」(ディン・シンハオ上海国際研究所)
  「米国の傘の下にいるには日本は大きすぎるし、自分で傘をさすにはもろすぎる。われわれは互いを必要としている」(ブレジンスキー元大統領補佐官・国家安全保障担当)
  「われわれは自動車やビデオ・カセット・レコーダーを売ることはできる。だが、日本を愛する人がいるだろうか。日本は“戦闘”には勝ってきたが“戦争”には負けてきた」(徳山三郎・三井総合研究所)
  「アジアが活力のある一つのブロックを形成することはまったくありえない。日本という大国が一国だけあって、あとはとるに足らない国々なのだから」(ウンスー・パーク・韓国エコノミスト)

  一九九〇年代の世界の行方を占おうと、経済専門紙<ウォールストリート・ジャーナル>が「九〇年代、そしてその彼方」という記事を毎週月曜日に連続掲載している。上に挙げたいくつかの発言は「世界での指導性」(一月二十三日)と「日本の将来」(同三十日)と題された記事に集められた各界人の意見だ。それぞれに、日本または日本人に関する鋭い観点があって、興味深い。

  <ウォールストリート・ジャーナル>紙自身の見方はこうだ。「どんな困難があろうと、米国は世界の指導者でありつづける/米国の基礎的な強さは日本、中国、ソ連、統合欧州の挑戦を受けつけない」「どれほどの金持ちになろうと、日本には世界の指導者としての多くの要素が欠けている/一方で多くの国々との関係を悪化させている日本が政治や軍事、イデオロギーの面でふるう影響力は小さい」

  世界が日本を扱いかねているように見える。
  そのあたりの事情を崔・韓国外相は「日本の信頼度は米国にははるかに及ばない」と表現している。
  なぜなのだろうか、と真剣に考えるときだ。

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