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1989年2月21日

対日販売術


  <一> 安く売るな―値段が安いと日本人は低品質とみなして、買わなくなる。
  <二> 粗悪品はだめ―製品は最大限に高品質でなければならない。
  <三> 日本人向きのデザインにしろ―製品はサイズや形、スタイルの面で必ず日本人の好み に合わせる必要がある。
  <四> 日本人を雇え―販売作戦従事者は日本の流通システムと、小売総額の五九%を売る全国百六十万のパパ・ママ・ストアーの存在を完全に理解しなければならない。
  <五> 日本の販売業者に頼るな―独自の販売組織を構築しろ。
  <六> 他に類を見ないサービスを提供しろ―日本の自動車販売会社は修理が必要な自動車を顧客客の自宅まででかけてピックアップしている。タクシー運転手は白手袋をはめ、ネクタイを着けている。ずさんでいい加減なサービスは通用しない。

  以上は<USAトゥデイ>紙(二月十日)が、日本進出に関心がある米国の製造業者に示した“売り込み心得”だ。「製品が何であれ、日本で相当のシェアを獲得しようとすれば、世界のほかの国々では見られないほど危険で困難、しかも費用のかかる仕事に出合うことになる」との注意書きもあった。

  だが、同紙によれば、いまの日本は以前とは異なり、外国製品がかなり売りやすい国になってはいる。米国産牛肉の特別セールは各地で盛んだし、輸入促進政策を採る通産省の勧めに忠実な国民は<フォード>製自動車から<リッツ>のクラッカー、<コダック>のフィルム、<ジョンソン&ジョンソン>のベビーオイルまで、米国製品をずいぶん買うようになってきている。同省幹部が自ら「日本人の中には、通産省は日本政府の機関か外国の機関か分からない、との声が聞かれる」と述べ、日本の市場開放の進行ぶりを宣伝するほどだ。

  実際、通産省は国内経済刺激策を採用して、収入の一八%を貯蓄に回す倹約家の日本人にカネを使わせようと躍起になっている。「いまこそ、米国の貿易業者が待ち望んでいた機会だ」と<USAトゥデイ>は言っている。
  <コダック・ジャパン>の年商は今年、一九八五年の水準の四倍、約十億ドルになると見込まれている。
  ハンバーガー・チェーンの<マクドナルド>、剃刀の<シック>、コンピューターの<IBM>などはすでに、日本で最大のシェアを獲得している。八七年、<コカコーラ>の日本での売り上げは米国内のものより大きかった。
  それでも、まだ多くの米企業が、日本の市場は閉鎖的だなどという思い込みにとらわれて、進出機会を見逃している。同紙は「かつてない規模で日本はいま消費ブームに包まれているのに…」と歯軋りでもしそうな様子だ。

  この三年間で、日本の消費者向け商品の輸入総額はほとんど二倍、金額にして百五十七億ドルになった。しかし、米国からの輸入はこのうちの二十億ドルだ。<BMW>や<ベンツ>の欧州、カセットテープや衣類の韓国、カメラや計算機の台湾などにオイシイところを持っていかれているのが米国の現状だ。
  東京の国際基督教大学のジム・エイブグレン教授もこの記事の中で「(ドル安で)突然、コストの面で有利になったにもかかわらず、われわれはこれを活かしていない」と口惜しがっている。
  また、ベストセラー『盆栽から<リーバイス>まで』の著者ジョージ・フィールド氏は「いまは高級品は欧州から、廉価品は韓国と台湾から輸入されている。米国は締め出された状態だ」と述べている。同氏の対日作戦は「“スポーティーなアメリカ”のイメージを持つ高価な商品を、流行に敏感でおカネに余裕のある日本の若者に売る」というものだ。米国の製造業者の大いなる奮起を期待しながら同氏は「米国という国はまだ、若者の心に訴える力を持っているのだから」と力説している。

  米国が全体として、やっと本気で、対日商品売込みを考えるようになってきたようだ。

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