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1989年4月4日

時局講演


  こうなったら社会党に政権を渡すしかないでしょ。渡せばいいんです。おタカさんはやりますよ。社会党政権でちゃんとした政治倫理の法律をつくり、消費税を凍結する―。
  日本は大丈夫。国民は一所懸命にやっているんですから。自民党の一つや二つはつぶれてもいいんです。
  政権がおかしくなったら憲政の常道に帰る。政権を野党に譲るんです。(自民党政権のように)長すぎるのがよくないんです。
  消費税なんかはだいたい不要で、不公正税制を是正すれば消費税の税収分は十分出るわけです。
  自民党は、(長老格の)福田が二階堂を総裁に推薦し、幹事長に小阪徳三郎、副幹事長に河野洋平でも据えて、党内を浄化しなければいけません。
  以上は、リトル東京の<ニューオータニ・ホテル>で三月三十日夜に行われた時局講演会(日本人協会主催)で政治評論家の細川隆一氏が語った内容の結論部分だ。演題は「日本はリクルート問題から立ち直れるか」だった。


細川隆一郎氏
(From:http://www.worldtimes.co.jp/itenews/writer.html)

  細川氏は熊本県生まれ。一九四二年に早稲田大学政治経済学部政治学科を卒業後、『毎日新聞 』に入社、政治部長、編集局長を務めたあと、七三年に退社してからは政治評論家として活躍している。
  細川氏は、評論家としての自分の原点を新聞記者魂に置いているらしい。「悪との断絶」「悪を憎む」というのが新聞記者だと断言する同氏は、講演の中でついでに、『毎日』の後輩に当たる安倍自民党幹事長が「記者経験をよく積まないうちに政界に走ったために」<リクルート疑惑>に巻き込まれることになった、とひとしきり悔やんでみせたりもした。

  その細川氏によると、<リクルート事件>というのは、中曽根前首相をお中心にして<リクルート>の江副前会長が引き起こしたもの。<クレイ>社のスーパー・コンピューターについては、日本電信電話会社(NTT)の真藤前会長がこれに絡んだ。一台ニ十数億円といわれるこのコンピューターは、四台をNTTが購入し、そのうちの二台を、技術支援などを含めた波格の好条件で<リクルート>に転売した。
  直接の購入者である真藤氏を米国訪問に同行させて、中曽根首相(当時)が日本の輸入促進策を米政府に誇示した事実から、細川氏は、前首相がコンピューターとカネの流れ、その意味を「知らなかったわけがない」と声を高めた。便宜を図ってもらった江副が謝礼をしなかったとも考えられないという。その額は、細川氏によると「<リクルート・コスモス>の二万九千株なんてものじゃない」そうだ。

  中園前首相は四月中に逮捕される―。それが細川氏の予測だ。東京地方検察庁特捜部への信頼もその予測の下支えとなっていた。
  細川氏は竹下首相に対しても辛辣だった。「カネ集めが実にうまい。年寄り殺しといわれるほど老人うけがいい。だが、とても総理大臣の器ではないですよ」というのが竹下評だ。
  副総理の宮沢蔵相、長谷川峻法相、副総理格の原田憲経済企画庁長官が<リクルート>絡みで相次いで閣僚を辞任したことだけでも、竹下内閣は十分に総辞職に値する、という細川氏は、総辞職がない場合でも「竹下内閣は早晩倒れる」とみていた。

  日本の政治状況についての講演をロサンジェルスで聴いた。「日本はリクルート問題から立ち直れるか」を聴いた。
  聴き手の関心のありどころはそれぞれだったろうが、少なくとも、中曽根前首相の同事件への関わりに関する“知的好奇心”の一部はかなり満たされたと思われる。

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