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1989年4月10日

土曜営業


  <ユニオン銀行>(本社サンフランシスコ/伊藤精七頭取)が四日、今月十五日から土曜日も営業すると発表した。時間は午前九時から午後一時まで。同行はさらに、平日の営業時間も、始業時間を一時間早める形で延長し、月曜日から木曜日までは九時から四時、金曜日は九時から六時までの営業態勢に入る。

  カリフォルニアでは、州一位の<バンク・オブ・アメリカ>、二位の<セキュリティー・パシフィック>、三位の<ウェルス・ファーゴ>がすでに、十五日からの土曜営業と平日の営業時間延長を発表しており、五位の<ユニオン銀行>を加え、州内上位五行のうち、<ファースト・インターステート>を除く四行がいっせいに顧客への窓口サービスを拡大することになった。
  四日の<ロサンジェルス・タイムズ>は、営業時間延長の理由として、銀行側が@顧客が自分たちの仕事終了後に銀行を利用したがっている A調査の結果、顧客が土曜日の営業を望んでいることが分かった―などが挙げられていると指摘、さらに、「銀行間の競争激化も大きな動機になっている」との<ウェルス・ファーゴ>副会長の言葉を紹介している。
  いち早く平日六時までの営業を開始していた同行によると、延長時間内の訪店客数は予想以上に多く、ATM(自動窓口業務機)の利用も予想に反して減少していない。この現象について同副会長は「顧客は銀行に(窓口業務)のほかの用件でも来ている」と述べて、時間延長が他の分野での営業拡大につながることを示唆している。時間延長にともなう経費の増大は特にはみられなかったという。

  日本では昨年四月、経済審議会の国民生活部会が労働時間短縮推進計画をまとめ、一九八七年には二千百十一時間だった、一人当たりの年間労働時間を九二年までに、週四十時間労働の完全実施と合わせて千八百時間にまで短縮しようという方針を発表している。そこでは同時に、有給休暇の完全消化、連続休暇制の定着、残業時間の削減などもうたわれていた。
  その方針に従い、国の行政機関は、国会、裁判所、国税庁、税務署などが今年一月十四日から、毎月第二・第四土曜日の業務を取りやめている。銀行などは二月から、すべての土曜日を休む完全週休二日制に入っている。

  六日の<朝日新聞>が労働と休日に関する世論調査の結果を報じていた。この調査では、週休二日制が社会で広く実施されることについては七二%が「賛成」と回答し、「反対」の一八%を大きく上回っていた。賛成の理由としては「ゆとりある生活ができる」が三六%で、他を引き離して一位だった。
  ただ、中央官庁や金融機関の週休二日については、三六%が「よいことだ」としたのに対し、三一%が「不便だ」と回答、「納得できない」の九%と合わせると四〇%が否定的な見方をしていることが分かった。このほかに「うらやましい」という回答が一八%あったという。
  個人としての休みはほしいが、サービス機関に休まれては困る、というのが多数意見だったようだ。

  日本人の“働きすぎ”が諸外国から糾弾されるようになって久しい。だが、<朝日新聞>によると、日本ではまだ「何らかの形で週休二日制を実施しているのは、従業員千人以上の企業では九割に達するが、企業全体では五割にすぎない」という状況だ。

  カリフォルニアの銀行の営業時間延長の動きを日本人がどう捉えるかが興味深い。「米国人もやっと再び働き者になってきた」と歓迎するか、「せっかくの日本の休日増加傾向に水を差すもの」と顔をしかめるか、あるいは「個人の休みを増やしながら、企業としては営業時間を延長できる態勢づくりが日本でも迫られることになろう」と早速、これからの問題に目を向けるか―。

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