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1989年6月5日

優先交渉国


  不公正な対米貿易を行っている国々に対し<スーパー三〇一条>を適用して対抗措置をこうじることを検討していた米国通商代表部(USTR)のヒルズ代表は先月二十五日、インドの<外国投資規制>と<外国保険会社締め出し>の二項目、ブラジルの<輸入許可制>の一項目を<不公正貿易慣行>と指定するとともに、日本を<三項目の問題を有する優先交渉国>と特定、@スーパーコンピューターの政府調達A人工衛星の国産化政策B木材加工製品の基準・認証―について、三年以内に輸入障壁を全廃させることを目標に、対日交渉を開始すると発表した。
  同条発動により、USTRは六月二十日までに対日交渉を開始し、一年半以内に成果が上がらない場合には、日本からの輸入品に一〇〇%の関税を課すなどの報復措置をとるよう義務づけられている。
  USTRのいう<優先交渉国>が<不公正貿易国>の婉曲な表現であることは言うまでもない。『朝日新聞』の高成田ワシントン特派員は今回の決定を“金テコ路線”と命名、この強硬路線でも@年間五百五十億ドルにものぼる対日赤字の解消にはつながりにくいAあがらない効果に不満を募らせた米議会や国民が再び“金テコ”を求めることになりかねないB日本の対米不信を深める恐れがあるC米国自身がケガをする可能性がある―などの点を指摘し、日米関係の将来に不安感を表明している。

  「米国自身のケガ」については、外国の対米投資が米国経済を利していることを協調した本『ノウムズ・オブ・トーキョー』の著者であるというジム・パウェル氏が『ニューヨーク・タイムズ』(五月三十日)紙上で論じている。
  パウェル氏は例として、一九八六年の日米合意の結果、八八年までに半導体メモリーの価格が四倍になった事実を挙げて、「半導体メーカーは喜んだだろうが、半導体のユーザーと数百万人の消費者は痛い目にあった」と述べている。「米国には、安くて質がいいから日本製品を買うのだという会社があり、個人がいる」という事実も見るべきだという考えだ。

  一九八七年にUSTRが三〇一条委員会を開き、報復措置の対象とするべき日本の電気・電子製品をリストアップするよう業界に求めたとき、寄せられた回答五百件のうちの大多数は「報復措置に反対」というものだったそうだ。また、同委員会が開いた公聴会の証人六十八人中の六十三人がやはり報復には反対したという。IBMやAT&Tなどまでが部品の提供を日本メーカーに頼っており、たとえば問題の一〇〇%の報復関税でだれが最もひどい“ケガ”をするかは、すでに明らかになっていたのだった。

  一方、米国自身が実施している輸入規制に関しては、ヨーロッパ共同体(EC)が今年も、乳製品や果汁、砂糖、ワイン、ピーナッツ、木綿、工作機械などで採用されている輸入割当制度など、四十一ページにのぼる制限リストを公表して、米政府に改善を求めている。
  そのEC自身が長く保護主義を維持していることもパウェル氏は指摘している。
  「貿易上の報復がいい結果を生むことはめったにない」というのが同氏の信念だ。報復で相手市場が開放されることもまれだという。

  高成田特派員は、「制裁をちらつかせて強制的に握手を迫ったところで、相手国には被害者意識しか残らず、対米不信を深めさせるだけ」と述べ、「感情のもつれを乗り越え、日米がどう協力して不均衡是正に前向きに取り組むか」が今後の問題だとしている。

  <優先交渉国>に特定された日本の次の出方に注目していたい。

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