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1989年11月1日

レーガン訪日


  九日間の訪日の旅から戻ったレーガン前大統領は二十九日、ブッシュ大統領に電話をかけ、日本訪問について報告した。その中でレーガン氏は、日米関係は良好であり、日本の指導者たちは米国とのあいだに健全で開かれた関係を築くことを望んでいる、と伝えたという。

  そのレーガン氏の訪日に関する評判が米国内で芳しくない。

  第一の問題点は、日本政府と並んで招待者となった<フジサンケイグループ>が費やした金額だ。レーガン氏への謝礼金二百万ドルを含めて七百十万ドルが一連のイベントに使われたといわれている。『ニューヨーク・タイムズ』は「まったくの商業主義にこれほどずうずうしくのめり込んだ大統領経験者はかつていなかった」と述べ、<フジサンケイグループ>による丸抱え招待に乗ったレーガン氏を厳しく批判している。幅広く、根強い人気を集めた大統領だっただけに、今度の訪日でレーガン氏が数日間“金満日本”にすっかり買われてしまったかのように見えたのが、やはり残念だったようだ。

  第二の問題点は、出演したテレビのインタビュー番組や財界人を集めた晩さん会でレーガン氏が、<ソニー>による<コロンビア映画>買収について「私は日本の対米投資を歓迎する。ソニーによる買収で米国映画は上品さと趣味の良さを取り戻すだろう」などと語ったことだ。同じ『ニュートーク・タイムズ』は「日本に到着した二十日以来、愛情あふれる歓迎を受けて、レーガン氏は浮かれムードに浸っていたようだ」と、皮肉をこめてそれを伝えた。
  議会では、ブライアン上議が「米国人は日本人や前大統領から(上品さなどについて)説教をたまわる必要はない」と述べ、露骨は反発を見せたそうだ。

  『USAトゥデー』の<ディベート>欄では、コロラド大学の歴史学者、パトリシア・N・ライムリック氏が「(講演会では)普通の人間なら、カネを払って聴きに来てくれた客に元を取ったと感じてもらいたいものだし、レーガン氏はもともと特権層の利益を守ることに力を注いだ大統領だ」という意味の意見を寄せ、レーガン氏の日本での行動と発言は一般の感覚からは遠いものだ、との突き放した見方を示していた。

  二十九日の『ロサンジェルス・タイムズ』に短い投書が掲載されていた。「日本からの投資を懸念するのは当然だ」という見出しがつけられたこの投書は、<ソニー>の盛田会長はこれまで、米国を相手にゲームを楽しんできたが、いままでは真の感情を隠していたのだ、と述べたうえで、「彼のUSバッシングは典型的な日本の戦略だ。思い出してみるがいい。真珠湾攻撃の前だって、日本は自分たちの意図は平和的であるといって、われわれを安心させていたではなかったか」と述べている。
  日本に関する一般からの投書の典型例の一つだ。

  議員や評論家、ましてや知日派知識人などによる議論ではあからさまになることはないが、この投書のような意見が米国人の一部にまだ根強いということを、日本人は忘れない方がいいだろう。
  レーガン訪日でたちまち米国の政財界・言論界に波風が立つのは、対日感情にそんな背景があることと無縁ではないはずだ。

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