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1989年11月13日

内外価格差


  日米貿易の不均衡是正のために必要だと米側が主張して十月十八日から二十八日のあいだに日米双方で実施された価格調査の結果が七日に発表された。調査対象となった商品は自動車、タイヤ、ビール、ジーンズ、陶器、ゴルフクラブなど百二十四品目(サービスを含む)。これを報じた『ロサンジェルス・タイムズ』によると、結果を見た米国政府は「有頂天になっている」とそうだ。「日本が補助金を出して輸出を奨励していることが分かった」からだ。

  *自動車
  @日本国内で一五、九七七ドルで売られている日本車が米国では一五、〇四五ドルと、約六%安く買うことができる
  A米国内で一四、二二九ドルで売られている米国車が日本では二五、六一三ドルと、約六〇%も高い

  *ビール
  @日本国内では一ドル四四セントでしか買えない日本製ビールが米国では一ドルで買える
  A米国内では七五セントで買える米国製ビールが日本では一ドル三七セントもする


  *ブルージンズ
  米国内では三二jの米国製が日本では五五ドル六三セントと、約七四%も高くなっている

  *ゴルフクラブ
  米国内で五三九ドル九五セントの米国製が日本では七六七ドル六一セントと、約四二%高い

  *カメラ
  日本国内では三一四ドル七九セントの日本製が米国では二六五ドルと、約一六%安く買える

  *レーザープリンター
  日本国内では二、三〇四ドル五八セントもする日本製が米国では一、五七五ドルと、約三二%も安く売られている

  以上はすべて、米国製品が日本では高く売られているのに対して、日本製品は逆に、米国で安く売られているという例だ(換算為替値 一ドル=一四二円)。

  全体では、調査された日本製品のうちの約六〇%が、日本で買うより米国で買う方が安いという結果になっていた。米国製やヨーロッパ製は九〇%が、日本で同等または高い価格で売られていた。

  国務省のマイケル・ファーレン次官はこの調査結果について、日本のメーカーが国内価格を高く設定して、そこから出た利益を、対米輸出製品の値下げ分補填に回し、輸出増大を図っていることがこれで明確になった、と述べている。

  小売業界大手<西友>の坂本春生顧問は『朝日新聞』の質問に答えて「日本は輸入品に限らず物価の高い国で購買力平価はいまだに一ドル=二〇〇円前後だから、今の為替レートで価格差が出るのは当たり前だ」とし、さらに「高くても売れる市場であれば、メーカーには価格下げる動機がなく、価格を高くするのは合理的な市場戦略だ」との考えを示し、日本での高価格は米国などの輸出元にも原因がある、と説明している。

  日本で売られると四二%も高くなるとされた米国製ゴルフクラブについて、日本のスポーツ用品メーカー<ミズノ>は、日米間の@流通機構A人件費B土地代などの差が価格差の原因だと述べているという。
  日本で高くなる理由としてはそのほかに、高い地価、日本人のブランド志向、気候、税金などが各業界から指摘されている。いずれも、これまでに何度も聞かされてきたものと同じ説明だ

  日米構造問題協議を通じて米国政府はすでに日本側に@国内価格設定方法の徹底点検A輸入品の流通システムの近代化B排他的ビジネス慣行の廃棄など、経済の根本的見直しを要求しており、日本側の「高い理由」の説明にこれ以上耳を貸す考えはない。「価格差は当たり前」という主張を受け入れることもないだろう。
  来年初めと予想されている衆議院選挙が終われば、内外価格差をめぐる米側の要求はさらに強まると思われる。

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