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1989年11月20日

大統領の決断力


  東独の改革が予想以上の速度で進展している。
  十七日にはモドロウ新首相が人民議会で施政方針演説を行い、外交面では、現在進められている欧州統合の動きに連携し、欧州共同体(EC)との協力関係を強化していく考えを明らかにした。また、内政面でも、集会と結社の自由化、自由選挙の実施などで大胆な変革を行う意向を表明し、経済についても、合弁事業、外資導入などに取り組んで根本的な改革を推進する方針を示した。

  〔ドイツ民主共和国〕
  @人口:一、六六四万人(一九八七年)A国民総生産:一、八七五億ドル(一九八六年)B一人当たりの国民総生産:一一、三〇〇ドル(一九八六年)

  ちなみに、西独〔ドイツ連邦共和国〕の方は、人口:六、一一七万人、一人当たりの国民総生産:一二、〇八〇ドル(一九八六年)となっている。
  東西二つのマルクの為替レートに関する議論は残るものの、この比較では、東独の一人当たりの国民総生産の数字の大きさが目につく。
  同じ東欧圏のハンガリーは七、九二〇ドル、ルーマニアは六、〇三〇ドル、ソ連は八、三七〇ドル(いずれも一九八六年)だ。八七年の日本は一九、六四二ドルだった。
  (八九年『イミダス』から)

  ソ連、ポーランド、ハンガリーとつづいた変革の嵐が東独にも波及したことの意味は、東欧圏における東独の卓越した経済力から推し量ることができる。“順調な社会主義国”でさえ、もう“変革”は避けられないことが明確になった、ということだ。

  来月の二日と三日、地中海マルタ島沖のボート上で、ソ連のゴルバチョフ最高会議議長兼共産党書記長と会談するブッシュ大統領が、東欧情勢をめぐる対応で評価を下げている。
  『ロサンジェルス・タイムズ』が十三日に、<ブッシュ大統領の動きはまるでボーイスカウト。政治家のものとは思えない>という意味の見出しをつけた記事を掲載すれば、翌日には『ウォールストリート・ジャーナル』が<大統領が用心深すぎると、(東欧諸国に)影響を与えるのは(米国ではなく)ソ連や米国の同盟国になってしまいかねない>と報じた。

  『ロサンジェルス・タイムズ』が危惧するのは、マルタ島沖の首脳会談をブッシュ大統領が「重大な決定や合意に到達するのが目的ではない」と説明している点だ。ソ連と東欧の情勢が激しく流動しているいまだからこそ、米ソは最高級レベル同士の会談を毎年実施し、具体的問題を協議するべきだ、と同紙は述べ、それが(国内基盤がまだ確立していない)ゴルバチョフ議長への大きな励ましにもなるのだ、と強調している。それが「政治家」の務めだというわけだ。
  『ウォールストリート・ジャーナル』は「この週末、米国の指導者がベルリン問題について勇敢で、人を勇気づける発言を行っているところをテレビで見た。だが、その指導者とはジョン・F・ケネディーであり、ロナルド・レーガンであった」と書いて、ブッシュ大統領が記者団を相手にホワイトハウスで行った「だれも困難に陥らない方法で対処しようとしている」という発言と対比させ、米国が長く待ち望んできた<ポスト共産世界>が到来しようとしているのに、そこに築くべきものの青写真を米国はまだ持っていない、とブッシュ大統領を厳しく批判した。

  モロドウ首相は十七日の施政方針演説で、「東独の民主的展開には後戻りはない」ことを国民に約束している。

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