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1989年12月18日

「歓迎 外国投資」


  外国からの直接投資は、巨額の貿易赤字で生じている米国の資金不足を補っており、雇用機会の喪失、高度技術の国外への流出などのマイナス効果ばかりに目を向けるべきではない―という内容の報告書が十一日、国際経済研究所(ワシントンDC)から発表された。
  報告書は、流布されている一般の意見とは異なり、工場や銀行などとして対米進出した外国企業は米国企業と同程度の給与を支給しており、雇用機会を減少させてもいない、としたほか、最近の積極的な進出にもかかわらず、外国企業がそれぞれの国の経済に占める割合はまだ、米国の方がカナダや欧州主要国よりも小さい、と述べている。
  同研究所の調査によると、労働者が外国系企業で働く割合は、米国が七%にとどまっているのに対し、西独は一三%、英国は一四%で、フランスは二一%にも達していた。

  商務省の発表によると、不動産や企業などに対する外国からの対米直接投資額は一九八八年、初めて米国の対外直接投資額(三千二百六十九億ドル)を上回り、三千二百八十九億ドルに達した。累積対米投資額が最も大きかったのは英国で、三一%を占めていた。急成長中の日本は一六・二%で二番目。オランダがそれにつづいて一四・九%だった。

  国際経済研究所の報告書の基調は<外国からの直接投資を歓迎する>というもので、外国企業への依存が拡大する結果、米国の防衛が脅かされることになるのではないかとの一部で危機感が抱かれているハイテクノロジー部門についても、同報告書は、国防総省に納品する外国企業は工場を米国内に置くように義務づけることを提案し、むしろ、対米直接投資を拡大させる方向で技術と資本を取り込むよう政府に勧告している。

  同研究所のバーグステン所長は、報告書の発表記者会見で、貿易赤字を埋め合わせるため米国が毎月必要としている百億ドルのうち、四〇%が外国からの直接投資でまかなわれている点を指摘し、引き揚げが容易な株や債券への投資より、工場などへの直接投資の方が米国経済にとってはより有益であるとの考えを強調したそうだ。

  ただ、この報告書でも、日本についてはいくつかの注文がつけられている。外国系企業で働く労働者の割合が日本では僅かに一%、米国の七分の一にすぎないことがその一つで、日本の対米進出状況と比較して、対日直接投資の困難さが改めて浮かび上がっている。

  同報告書の著者の一人、クルグマン・マサチューセッツ工科大学教授(経済学)は同じ記者会見で、「米国内に自国の富のかなりの部分を投資していることに気づけば日本は、米国政府の政策決定と自国がいかに大きな利害関係を持っているかを知ることになろう」と述べ、米国政府の市場開放要求に応えて、対抗規制措置を発動させない方向で日本政府は動くべきだ、との考えを示している。

  『時事通信』は、同報告書が「とりわけ日本企業が所有する米国現地工場の原材料、部品の輸入が高水準に達しているため、外国直接投資が米貿易赤字を拡大する傾向にあると分析。摩擦を回避する意味で、日本企業が現地調達比率を高める必要性を訴えた」と報じている。

  <歓迎 外国投資>の看板から<ただし日本企業は条件つき>の文字を消すには何が必要かを考えたい。

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