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1990年2月5日

景気減速


  連邦準備制度理事会(FBR)のグリーンスパン議長は先月三十日、議会上下両院経済合同委員会に出席し、米国経済が今後六か月間にリセッション(景気の一時的後退)に突入する確率はむしろ低下している、との見方を示した。

  サンフランシスコ連邦銀行は二日づけ週報で、日本と西独の好景気がつづく限り、米国経済は一般に懸念されているほど極端に落ち込むということはない、とする楽観的な見通しを明らかにした。

  一方、先月二十六日の『ウォールストリート・ジャーナル』は、ペンシルベニア州の経済調査専門家、アルバート・シンドリンガー氏の予測などを紹介する<リッセッションはその薄気味悪い姿を現すのか/専門家は否定し、人々は警戒する>という見出しがついた記事を掲載した。
  シンドリンガー氏は全米の一般世帯にインタビューを行って、回答者の財政・就業状況を聞き出し、<肯定的>な回答が五〇%以下だった場合は<近くリセッションがやってくる>との予測を出すことにしているそうだ。
  同氏が一月二十二日までの四週間に集めた回答の中で<肯定的>だったのは四八・二%だった。同氏の分析によると、同時期、ワシントンDCと少なくとも三十四の州が経済的スランプに陥っていた。それらの地域には全米の世帯の五二・七%が居住していることから、同氏は<全国的なリセッションは近い>との結論に達しているという。

  三十一日の『ロサンジェルス・タイムズ』ではジェイムズ・フラニガン記者が、ブッシュ大統領の予算教書に触れながら「これからの数十年間に受ける大きな挑戦を乗り切るためには、米国はより高度な経済成長が必要だ」と論じ、さらに「米国が国民の生活水準を高め、国際市場競争に勝ち、次世紀に予想されている年金生活者の急増に対応するためには、貯蓄を増加させるべきだ」と訴えていた。
  経済成長を維持するカギは貯蓄の増加にある、というわけだ。
  「予算教書は<貯蓄・投資・生産性の拡大>の項目で、米国が手元の資源を超えた暮らしをしていることを認めた」と同記者は言う。
  「政府は国内需要を満たすために国内外から資金を借り、国は輸出以上に輸入してきた。消費者はクレディット漬けの買い物をつづけ、企業がまた借金をくり返す。いずれも“分”を超えたやり方だ。
  「米国では、本来なら企業活動に投資されるべき国民貯蓄が、財政赤字を埋め合わせるために政府が発行した国債の償還に回されるという悪循環が生まれている。その国債への投資を増加させようと金利が高く設定されるため、企業に資金がいよいよ回らなくなる―」

  ブッシュ大統領は三十一日に行った一般教書演説で<未来への投資>の必要を訴えた。経済については「厳しい市場競争で、米国は大きな挑戦と重大な局面に直面している。挑戦に対応するためにいくつかの基本的変革を実行しなければならない」と強調した。
  『朝日新聞』は二日の社説で「しかし財政赤字の解消にしても、貯蓄の奨励にしても、歴代大統領が訴え続けてきた課題である。同じ事を繰り返し言わざるを得ないところに、米国の政治の難しさと問題の根深さがある」と評していた。

  米国の経済と国民の暮らしはいま、曲がり角に差し掛かっているようだ。

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