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1990年2月12日

ロビー活動


  日本の対米ロビー活動に批判的なパット・チョート氏によると、米国の対日貿易政策をめぐる議会や政府の動きを探り、情報を集めるために、日本がワシントンで使ったカネは昨年、カリブ海の国グレナダの国家経済と同規模の一億ドルから一億五千万ドルになっていたという。
  そのチョート氏が米国人に向かって「彼ら(日本人)が代表者を立てる権利を持つことはだれも疑わないが、これは度を超えている。彼らは政策決定に影響力を持つ人びとの内部に深く入り込んでおり、われわれは自分たちの運命が支配できなくなろうとしている」と警告している。
  『ロサンジェルス・タイムズ』(一月三十日)にアート・パイン記者が書いたそんな記事を興味深く読んだ。
  日本人自身と日本人が雇ったロビイストのワシントンDCでの活動は、米国法の下では完全に合法的なものだ、と認めながらも、例えば、エコノミストのマイケル・バーカー氏は、日本の情報収集とロビー活動の集中、浸透ぶりを米国人はもっと心配するべきだと主張し、「日本がやっていることは、他の国でなら非合法だ。米国でもある程度の社会的非難は受けるべきだ」と指摘している。
  日本人のためにロビー活動を行う人物の中には、ロバート・シュトラウス氏(富士通)、ウィリアム・ブロック氏(トヨタ)など、通商代表部(USTR)代表経験者が三人も含まれている。チョート氏は「影響力のある人物とできるだけ多く“カネの関係”を結びたいと日本人は考えているのだ」と批判している。
  パイン記者は「日本人が雇ったロビイストは腕がいい」と言う。「政策決定会議に出席した政府高官がオフィスに戻ったときには、もう日本人が、会議で話し合われたことに関して電話をかけてきている」などという話は珍しいものではないらしい。
  司法省の記録によると、日本人の利益を代表して活動している米国の法律事務所や広告会社は九〇に達している。他国を完全にしのぐ数だ。パイン記者は「<東芝>のココム違反事件の際には、厳しい制裁に反対するロビイストが群れをなして議会に向かった」と記述している。
  ロビイストは日本人のために、大統領や上下両院議員に対する献金活動にも精を出す。献金額は、候補者やスタッフが「献金者がだれであるかに気づく程度」になっているという。
  日米が通商問題で厳しい交渉を重ねていた一九八〇年代半ばに日本側のロビイストとなっていたのは、当時のUSTR代表の長年の友人、ジェイムズ・レイク氏だった。レイク氏の会社は八六年から八九年の初めにかけて、日本の企業、業界団体から六五万七、二三七ドル一七セントを受け取っていた。そのレイク氏は「クレイトン・ヤイターは友人に言われて何かを決めるほど影響を受けやすい人物ではない」と語っているが―。
  エコノミストのバーカー氏は「退職後にある人物のために働くと三十万ドルがもらえると分かっていて、その人物に厳しく当たる者はいないだろう」と述べ、対日交渉に臨む米側高官でさえ、日本のロビー活動の影響から無縁ではないと指摘している。
  ところで、日本人が使うカネは活かされているのだろうか。日本経済研究所で働いたことがあるエド・リンカーン氏は「あれほどのカネを使っているのに、信じ難いほど何も得ていない」と断言している。「出すカネ全部を騙し取られているとも言える」とさえ述べている。
  <元大統領(レーガン氏)を二百万ドルで買った国>日本がワシントンで行うロビー活動の状況の一端をパイン記者から学ばせてもらった。

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