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1990年3月29日

開放容認ムード


  通信社『UPI』が二十七日、『日本経済新聞』が日本全国に住む一万人を対象に実施した日米関係に関する世論調査の結果を伝えてきた。この調査は、今月十六日から十九日までの間に、電話インタビューで対象者の考えを尋ねたもので、「回答者の四七・四%が<外国製品の輸入を大きくするために日本は経済構造を変えなければならない>という考えに完全にまたは基本的に賛成している」との結果が出たほか、「八五・九%が<日本は米国の要求を積極的に受けとめるべきだ>と考えていることがわかった」という。
  この調査では一方、「日本は貿易障壁を低くすべきだ」と考える人の五一・七%が「自分たちの生活の質を向上させるため」、四二・二%が「日米関係をいい状態に保つために必要なことだから」と回答していた。

  コメの輸入について『UPI』は「意外なことに」質問を受けた人のうち六三%が、完全に自由化するか、あるいは何らかの政策変更を行うべきだと回答した、と伝えている。
  日米関係の将来に関しては、大半が<両国は基本的には良好な関係をつづけるだろう>と見ている一方、五一・四%が<貿易摩擦の結果、関係が悪化するのではないか>と憂えていることが分かったという。

  『朝日新聞』に先月、小さな記事があった。<お粗末な社会資本><一人当たり/住宅面積、米の四〇%/公園は欧米の七%>という見出しがついていた。
  構造協議で米側が<公共投資の増加>を求めていることに触れて「公共投資の蓄積ともいえる社会資本をみると、(日本の現実は)極めてお粗末だ」と指摘した記事だ。
  この記事によると、日本の住宅は、一人当たりの床面積が二五平方メートル。米国の六二平方メートルの四〇%だ。英独仏と比較しても「大きく遅れている」そうだ。
  政府の住宅政策では、歳出総額に占める住宅対策費と住宅関連の減免税額の合計の割合は一九八九年、米国が五・三%に達していたのに対し、日本はわずかに一・九%にとどまっていた。
  東京首都圏のマンション(コンドミニアム)の値段は平均、年収の八倍だ。欧米では「せいぜい四倍から五倍で買える」のだと記事は伝えていた。
  公園の整備状況を八九年の<建設白書>でみると、一人当たりの面積は東京二十三区内で二・三平方メートル。欧米四か国の首都の平均面積三一・四平方メートルとは大きな開きがある。
  自動車一万台当たりの日本の高速道路供用距離は〇・九キロメートル。欧米四か国平均の三分の一だった。下水道の普及率も欧米の半分、全世帯のおよそ四〇%に達しているにすぎない。

  パームスプリングで三月初めに行われた日米首脳会談で海部首相はブッシュ大統領に対して、今後の政策遂行では「日本において生活の質を向上させるのが目標」だと語ったそうだ。首相のこの目標は、少なくとも、世論調査で<日本は貿易障壁を低くすべきだ>と回答した人の過半数以上、五一・七%の考えと完全に一致している。
  海部首相のパームスプリング発言を米国側は「“外圧”に押されてやむなし」という形にならなければ貿易政策を決定できない自民党の従来の思考、政策決定方法から離れ、国民の声を聞く形で、自らの政治方針として、日米構造問題への積極的な取り組みと日本の市場開放の意向を表明したものだ、と受け取っている。
  国内の諸利益団体との絡みからしか政治を見ない議員が大多数を占める自民党が<米国の要求を積極的に受けとめるべきだ>と考える日本人が八五・九%にも達している状況にどう対処するかに注目していたい。
  
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