====================


1990年5月2日

謙虚な反省


  中山外相が先月二十六日、衆院予算委員会の分科会で、戦前・戦中の日本と朝鮮半島との関係について発言し、日本の植民地支配や戦争中の行為に対する“反省”の姿勢を表明した。同外相の言葉は「第二次大戦は、近隣諸国やその国民に重大な損害を与えた日本の軍国主義的な侵略だった、との認識を持っている。これらの(朝鮮半島の)方々の心の中にわだかまりがあるとすれば、それをとっていただくために、心から、過去の悲しい侵略の問題を謙虚に反省しなければならない」というものだった。『朝日新聞』はこれを「これまでの政府答弁に比べてきわめて率直な表現」だと伝えていた。
  同発言は社会党の仙谷由人議員の質問に答えたもので、植民地支配に関する国会の謝罪決意についても同外相は「国会でそのような考えがあるとすれば、将来の日韓の友好発展のために価値がある」と述べ、決議を歓迎する考えを示した。
  自民党政府の閣僚の発言としては久々の“適時打”と言えよう。

  二十五日の『朝日新聞』に「日本に欠ける歴史認識/在日韓国人『三世』問題」という記事があった。
  日本に九十日以上の長期滞在をしている外国人は一九八九年六月末現在、約九十七万人。このうちの七〇%強、六十八万二千人が韓国・朝鮮人であり、さらにそのうちの九〇%以上が、戦前に<帝国臣民>として日本に強制連行され、炭鉱や鉱山、工場の労務者として働かされ、日本敗戦後も引きつづき日本での生活を余儀なくされた一世とその子孫だそうだ。

  在日韓国人の法的地位協定が成立したのは一九六五年だ。この協定では、終戦前から日本に居住している韓国人と、その子供として七一年一月の協定永住申請期限以前に日本で生まれた韓国人を一世、その直接の子供を二世とし、ともに永住権が与えられることになったものの、その<協定二世>の子<三世>については、九一年までに協議することとされ、現在まで結論が出ていない。
  八五年五月から行われている事務レベル協議は時間的には詰めの段階に入っているが、先月二十六日と二十七日にソウルで開かれた高級実務協議でも、指紋押なつ制度と外国人登録証の常時携帯義務の撤回を韓国側が強く求めて、直ちに撤回することは無理だとする日本側とまだ食い違いを見せていた。
  米国とカナダがすでに、戦時中に日系人を強制収用したことを公式謝罪し、補償するすることを決めたことに比べれば、朝鮮半島と台湾で行った植民地支配に対する日本の反応は鈍いと言うしかない。

  二十九日の『朝日新聞』によると、韓国外務省は二十八日、盧泰愚大統領の五月下旬の訪日の際には、日本によるかつての朝鮮半島の植民地支配について、責任の所在を含め、天皇がこれまで以上に明確な謝罪の言葉を述べることを韓国世論が求めており、各国政府も世論を無視できないと考えていることを明らかにした。
  昭和天皇の「今世紀の一時期において、両国の間に不幸な過去が存したことは誠に遺憾であり、再び繰り返されてはならないと思います」との言葉では十分ではないということだ。

  中山外相と崔韓国外相の会談が三十日、韓国外務省で行われ<協定三世>の法的地位・待遇問題で、<三世>以降の子孫に対し@指紋押なつは行わず、これに代わる適切な手段を早期にこうずるA永住権については簡素化した手続きで裁量の余地なく認めるB外国人登録証の常時携帯制度は適切な解決策を見出す―などで両者が一致した。強制退去についても命令発動理由が限定された。
  一世、二世の地位改善は放置されたままだが、中山外相の「謙虚に反省しなければならない」との考えがまず一歩具体化したものとして歓迎したい。

------------------------------

 〜ホームページに戻る〜