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1990年7月8日

増税論議


  ブッシュ大統領が先日、ふくれあがる財政赤字と戦うには「税増収が必要だ」との考えを発表して以来、新聞紙上などで、増税論議が以前より多く目につくようになってきた。
  二日には『ロサンジェルス・デイリーニュース』が可能な増税パターンを予想、読者に紹介していた。
  【所得税】
  所得税の広範な引き上げが最大の増税を可能にすることは間違いない。だが、その分、納税者の購買力が減少し、すでに停滞の様相を見せている米国経済を後退局面に追い込むことになろう。つまりは、所得税の全面引き上げはまずあり得ないということだ。
  ただ、最高所得層に対する増税圧力が増大することは十分に考えられる。現在の所得税は、収入が増えるに従って、税率が一五%、二八%、三三%と引き上げられているものの、最高所得層には再び二八%が適用されることになっているために、例えば、夫婦二人の収入が年間七万八千四百ドルから十六万二千七百七十ドルまでの中間所得層の税率が、二十万ドル以上の層よりも高いという事実があるからだ。
  議会民主党は、最高所得層にも三三%の税率を課すよう主張している。

  【キャピタル・ゲイン税】
  キャピタル・ゲインとは土地、建物、株式などの取引から上がる利益だ。議会民主党が高所得層への増税を主張すれば、ブッシュ大統領と共和党が再びキャピタル・ゲイン減税案を持ち出すことは間違いない。同大統領は税増収の必要と並んで「経済成長奨励策」の重要さも強調しており、その成長策がキャピタル・ゲイン減税であることは広く知られている。
  ブッシュ大統領は一九八八年の選挙運動中、減税は国民の投資意欲を拡大し、結果的には税収を増やすことになると主張していたが、いまもその考えを変えてはいない。一部民主党議員は、基本的にはこの考えに反対しているものの、高所得層への所得税引き上げを同大統領が認めれば、キャピタル・ゲイン減税を受け入れるもようだ。

  【証券取引税】
  株式市場での売買に、一ドルにつき〇・五セントを課税しようという案だ。提案している民主党議員によると、年間増収は百億ドルに上る。例えば、ガソリンやたばこ、酒類などと異なり、平均的労働者には直接影響がない増税であると説明されている。また、課税されることで、投資家の気まぐれ売買が減少するとの期待も込められている。

  【環境税】   環境破壊につながる廃棄物を出す製造業などに税金を課そうという案も提出されている。
  議会予算局の見積もりでは、二酸化硫黄を排出する企業に、一トン当たり百五十ドル、一酸化窒素では二百五十ドルを課税すると、今後五年間に二百二十億ドルの増収が可能になるという。そのほか、地球温暖化の元凶とされる石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料への課税も検討対象に挙げられている。炭化物の排出一トンにつき二十八ドルの徴税で、年間千六百二十億ドルの増収が見込まれている。

  【利用者税】
  レクレーション用ボートの所有者から一隻につき二十五ドル、連邦や州、その他の公的機関がが所有している土地での鉱業採掘権の申請一件につき百ドルなど、利用者に何らかの税を課そうという案は、まずどの増税案にも含まれており、いずれにしろ現実化される可能性は高い。
  これらのほかにガソリンやたばこ、酒類への課税強化案が出され、次第に多くの支持者を集めている。
  納税者が全体として現在の生活水準を急激に落とすことなく財政赤字を縮小するには、増税もやむをえない―との意見が大勢を占めてきたようだ。だが、いったいどの案が最良なのか。
  考える主役は納税者自身であるべきだが―。

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