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1990年7月12日

自動車販売実績


  六月下旬、北米で製造されて米国内で売られる自動車の販売台数が前年比一一・九%増加し、不振にあえぐ業界がひと息ついている。ことし前半の六か月間では最大の伸びだ。

  だが、米国自動車業界の状況は厳しい。
  米国の自動車メーカーと日本車販売各社が五日に発表したところでは、ことし前半の米国内乗用車新車販売台数は四百八十四万四千七百九台。これは前年同期比で五・七%の減少だ。
  そんな中で、米国内工場での製造分を含めて日本車の販売は着実に伸び、シェアも昨年の二四%から二八%へと上昇している。逆に、米国車の比率は六九%から六五%へと下降している。
  この六か月間に前年同期より販売を増やした日本メーカーは三一・五%増のトヨタ、一三・五%増のホンダ、八八%増のミツビシ。いずれも米国内製造車の販売が伸びたものだ。米国内製造車の伸び率は全体で四四・四%に達している。
  好調メーカーの伸びが、販売一三・六%減のニッサン、三一・一%減のスバルの不振をカバーした形にもなっている。

  米国車の方は、最大メーカーであるGM(ジェネラル・モーターズ)がシェア三五・七%を維持して面目を保った。だが、フォードのシェアは二〇・八%へと、およそ二ポイントの下降。アイアコッカ会長自らが登場するTVコマーシャルを放送して日本車攻撃に熱心なクライスラーは販売を一七・〇%減らした。シェアも一〇・六%から八・九%にまで落ち込み、シェア順位でもホンダ、トヨタに抜かれて五位に甘んじることになっている。

  これを報じた『ウォールストリート・ジャーナル』は「競争のための“公正な共通の舞台”をつくるために日本メーカーは米国内に工場を建設すべきだと米国三大メーカーの経営陣が言っていたのは、ほんの数年前のことだ」と書き、日本からの“純輸入車”だけでなく、米国製日本車との競争でも米国車が大苦戦している現状を紹介している。

  『時事通信』の六日の報道によると、自動車マーケット・リサーチ会社<J・D・パワー&アソシエイツ>が自動車購入者を対象に行った満足度調査で、ホンダが一九九〇年度総合第一位に選ばれた。ホンダの一位は五年連続だ。
  この調査は自動車の品質やディーラーのサービス、故障への対応などに関して、新車購入後一年の顧客十万人を対象として電話アンケートを行い、総合評価したもの。
  <リジェンド>や<インテグラ>を販売する<アキュラ>部門が一位となったほか、<アコード><プレリュード><シビック>などのホンダ自体が五位に入っている。
  日本車メーカーはそのほか、三位にトヨタ、六位にニッサン、七位にスバル、十位にマツダが入った。
  米国車の品質が近年大幅に向上しているものの「日本車の方がいいのだという見方が(米国の消費者の中に)まだ残っている」(ニューヨークの専門家デイビッド・ヒーリー氏)のが現実のようだ。

  新車購入予定者に大きな影響を与えるとみられる自動車情報誌『モーター・トレンド』などが、純輸入車の購入には抵抗を感じるという“フラッグ・ラバー”(愛国者)に“米国製日本車”を奨めている現状について、アイアコッカ会長はもう少し真剣に考えるべきかもしれない。TVコマーシャルに自ら出演し、小規模で信頼性に疑問が残る消費者意識調査を武器にして「日本車よりも米国車の方が高品質だ」と訴えるだけでは販売は伸びないだろう。

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