====================


1990年7月17日

対日警戒感


  『ニューヨーク・タイムズ』紙と<CBSニュース>が日本の放送局TBSと協力して行った日米両国民の意識調査の結果が十日の同紙に掲載された。
  最も注目されるのは「日本の経済力に対する心配、外国からの対米投資を制限しようという気分が米国人のあいだに急速に高まり、ソ連の軍事力に対するよりも日本の経済力に対する警戒の方が高くなった」ことが改めて明らかになったことだ。
  「次の三つの国、地域からの対米投資は米国経済を強化するか、米国経済の独立を脅かすか」との質問では、日本については米国人の六四%までが「独立を脅かす」と回答していた。これに対し、「強化する」は二七%だった。産油国が集中している中東はそれぞれ五〇%と三三%。欧州は三七%と四七%で、米国人の半数近くが欧州からの対米投資を歓迎していることも分かった。

  商務省の経済分析局が先月十二日に発表した一九八九年分中間統計によると、外国からの対米投資は同年、八八年の一兆七千八百六十億ドルから一二%、二千百四十六億ドル増加し、二兆ドルに達していた。増加分のうちの三分の一、七百二十億ドルは企業や工場、不動産などの買収に使われた<直接投資>だった。残りの三分の二は米国企業の株や国債の購入に使われていた。
  外国からの<直接投資>は八九年、前年比二二%も伸びていた。最大の直接投資国である英国は同年、投資を二百二億ドル増加させ、外国による全対米投資の三〇・五%に当たる千二百二十一億ドルの資産を保有していた。日本は同年、前年比三二・四%増という積極的な投資活動を行い、外国からの全投資の一七・六%、七百六億ドルを占めるまでになっていた。
  米国内の資産残高は以下、オランダ、カナダ、西独、フランスとつづいている。

  八九年の外国からの対米投資額は八〇年の四倍に上っている。その投資が、財政赤字に悩む米国に資金を提供、経済の停滞を防ぐ役割を果たしていることは間違いない。外国からの投資は「地球規模で見た場合の米国経済の強さの証明」との意見も出ている。
  だが、否定的意見もある。米国経済が外国資本に頼りすぎては、政治・経済的な独立が侵食される、というものだ。会計検査院は、外国からの投資で「米国防衛産業の基盤にしだいに穴が開けられているにではないか」との懸念を表明している。

  英国やオランダが米国“建国以来”の投資実績を持つのに対し、日本の対米投資が本格化したのはほんの数年前のことだ。この短い期間に、日本の対米投資残高は英国に次ぐ二番目の大きさにまでなってしまった。<コロンビア映画>やロックフェラー・センターに代表されるように“目につきやすい”対象に進んで手を出したことが、日本の対米投資活動をいやでも目立たせた。

  ニューヨーク・タイムズ=CBS=TBSの共同世論調査に「米国は日本人を高く評価していると思うか、見下していると思うか」という質問がああった、当の米国人の四二%までが「高く評価している」と考えていたのに対し、米国人に高く評価されていると感じていた日本人はわずかに一九%、七〇%が見下されていると思っていた。
  この差は大きい。日米両国政府、報道機関の情報提供に問題がありはしないか、との疑問がわいてくる。

  サミットのあとジョージア州アトランタに立ち寄った海部首相は十二日、ジョージア日米協会の晩さん会で講演し、日米相互理解を促進することを目的とした<コミュニケーション改善構想>を発表した。日米の対話を国民レベルにまで広げ、米国内に強まっている“日本異質論”を解消するのが狙いだという。
  相互誤解をなくすための積極的努力の必要がますます高まっている。

------------------------------

 〜ホームページに戻る〜